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「・・・そういやさ。」
「ん?」
話を切り出した須藤は、何か考え事をしているようだった。気になることがある、そう言いたげに声をかける。
「お前の相手、どこの家の子息だって?」
「え、・・・っと。確か、濱松って家だけど」
濱松。
その名前に、須藤はピクリと反応を見せた。
「濱松の家って、確かイギリスのローランドと政略婚したって聞いたな」
「ああ、“かずま”って名前も日本名だっ」
「て・・・」
呟いた瞬間、城島はふとある事に気付く。
かずまとの見合いから結構な月日が経つ。だが城島は、かずまの本名を知らなかった。
英国のローランド家といえば、昔とある事で有名になった家系だ。それは、かずまの出生に深く関わる事で、今では既に忘れられていてもおかしくないものだが、城島は気になってしまう。
須藤は慣れた手つきでキーボードを早打ちすると、パソコンの画面を城島の方へと向けた。
「ローランドの子息、ほら」
液晶画面に表示されているのは、かずまによく似た容姿をしている男児の姿だった。それは約10年前のネットニュースで、未だに真新しい出来事のように、大きい見出しで書かれているものだ。
“英国貴族のオメガ男児、育児放棄か”
その文面を見て、城島はかずまがこれまでどうやって生活してきたか思い出した。別邸に隔離され、親ともろくに会わせて貰えなかったという彼は、見合いの際に両親に連絡をしていた。
あの時、親にはどう言われたのだろう。何ともない表情をしていたけれど、その裏では——
考えると、直ぐにでも顔を見たいと思ってしまう。
「ノア・セシル・ローランド?」
「うん。それが多分、お前の嫁の本名」
どきりと、心臓が鳴った音を、確かに感じた。同時に、自身の内側から湧き上がってくるものの正体も理解していた。
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