アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
13
-
「須藤、俺帰るわ」
「・・・ん。嫁にちゃんと伝えろよ」
「おう」
出来れば、跡を継いでからやりたかったこと。だけど、気付いてしまっては見逃せなかった。
城島は走りだしている。
身体も、心も、今は、ただ一人の伴侶のために。
——……
——……
バタンッ!
別邸のドアが勢い良く閉まる音がする。ドタドタと不躾に迫る足音に、かずまは何事かと部屋のドアへ視線を向けた。
「かずまっ!!!!」
初めて、こんなにはっきりと名前を呼ばれた。かずまは驚きつつ、息切れの激しい城島を心配している。
彼はなんだか焦っているようだった。
「たいしさん?あの、どうしたんですか?」
「・・・好きだ」
「へ?」
ただ一言。
その3文字は、かずまの鼓膜を確かに揺らした。けれど言われ慣れていない言葉は、唐突に出ると訳が分からなくなる。目を見開いて、間抜けな音を漏らすだけ。
目の前で、肩で息をしている城島は暑さからか、それとも照れからか、頬が仄かに赤く染まっている。いきなりで驚いたけれど、そんなところも可愛いな、とかずまは目を細めた。
そしてもう一度、確かめるように城島は紡ぐ。
「・・・好きだ、かずま」
それはずっと、かずま自身が、昔から言われたかった言葉だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
13 / 31