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かずまの話
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ノア・セシル・ローランド。
英国で5本の指に入る大富豪で、自身の代だけで巨万の富を成し得たアドルフ・ニア・ローランドの息子である。
その容姿は端麗と言わざるを得ず、パーティーへ出れば周囲には人が集まった。産まれて間もない頃はまだ、両親の愛情も感じられていたのだ。
——それが突然無くなったのは、ノアが4歳の時。
丁度、第2性別の判定がされた時だ。何度、どのような種類の検査方法も、結果はオメガにしかならなかった。
ローランド家には、代々アルファ性しかおらず、たまに出るベータ性の方が珍しいと言われた家系だ。そして、オメガ性とは縁がないと思われていた。
「せっかく上り詰めたのに、こんなんじゃ・・・」
「アドルフさん、残念ね。血縁にオメガが出るなんて」
「日本人から貰ったんじゃないの? よくいるって言うじゃない」
親族からの視線、そして世間からの視線が痛かったのだろう。当時、日本から嫁入りした母親はショックでノイローゼ気味の症状が出始め、自室にこもるようになった。父親は母親のせいだとは思っていなかったが、自分の血縁からオメガが出たという事実を受け止められなかったのだ。
「ノア。今日からこの家で暮らしなさい」
「おとう、さん?おかあさんは?」
問いかけに、父親が答える事はない。
預けられた家が、産まれてから住んでいた家からは程遠い、田舎の別邸だった。
——どれだけ待っても、両親は来ない。食事は豪華で、従者が遊んでくれて、ふかふかのベッドで寝られる。けれど、ノアには寂しさしかなかった。
「お父さんとお母さんは来ますか?」
そう、従者に問いかけた事は数え切れない。何度も何度も問いかけては、謝られてはぐらかされる。いつしか、自分は両親に見捨てられたのだと微かに悟っていた。
寂しさでたまらない。
そんな気持ちを奥底に隠して、笑顔で明るく振る舞った。
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