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肌寒くなる初秋頃。だんだんと色付く紅葉を見ながら、腹壁を蹴る我が子を愛しく思い、お腹を撫でる。
暖かいニットカーディガンを肩からかけている華奢な男は、背後の気配にゆっくりと振り向く。
「たいしさん」
「こんなところにいたのか」
暗い灰色のスーツに身を包んだ男が、名前を呼ばれて男に駆け寄った。まだ休んでないとダメだ、なんて微笑みながら言われれば、くすりと笑って謝る。
「今日は暖かいから、少しならいいかなって」
「確かに暖かいけど。無理はするなよ」
さあ、と手を引かれゆっくりと歩き出す。男が声をかける度に、お腹にいる我が子は返事をするかのようにお腹を蹴っていた。
「“おとうさん”だって、分かるんですかね。たいしさんが話す度ずっとお腹蹴ってる」
「うそ。ほんとに?ちょっと触らせて」
部屋着の上から撫でると、また軽くお腹を蹴ってみせた。その反応に二人で嬉しくなる。
早く出てきてくれないかと、今の時期はわくわくと、そわそわが半分ずつといったところだろうか。
城島太史は、あれから城島家の跡取りとなり正式に会社を継いだ。それから部下達に支えられながら、懸命に業務をこなす日々。そして、家に帰ると、身篭った自身の妻が日頃の頑張りを労ってくれた。
ノアの妊娠が判明したのは、番になってから数週間後の事だ。
オメガの妊娠は発覚が分かりやすく、つわりや軽い腹痛、微熱、そして噛まれた頸の疼きにより判明する。ノアは症状がとても顕著で、医者にかかるとすぐに分かった。
お腹の子どもはすくすくと大きくなり、来月には出産を迎える。
城島は、ノアの華奢な体型でお産は大丈夫なのかと医者に不安を吐露したことがあった。けれど、オメガ男性は妊娠中、女性ホルモンの分泌が盛んになるため、身体は女性寄りに変化する。出産するまでそれが維持されるため、見た目は男性だが身体の内部の造りは女性そのものなので、出産には耐えられるらしい。
だから心配いらなくても大丈夫、などと医者に笑って言われた。
「ノア」
「・・・はい」
「俺と出会ってくれて、ありがとう」
城島が泣きそうになっているのを、ノアは横目で見ると、静かに微笑む。
「こちらこそですよ。たいしさんが、僕の心の支えです。ずっと、これからも」
その言葉に、城島も優しく微笑んだ。
「・・・愛してる」
「愛してます」
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