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「お疲れ様でーす」
「うい〜、おつかれ〜」
早上がりの人達の声を他所に黙々とホールの掃除をする。
今日のバイトもいつもと変わらず常連さんと少しの雑談を楽しんでいたら
時間なんてあっという間に過ぎていった。
天井では暖かい明かりを灯しながら落ち着いた店の雰囲気に馴染んだ
深い茶色のファンが静かに回っている。
「いっずみくーん!お疲れ!」
「ん、村前さんもお疲れ様」
「もー!そろそろ柚って呼んでくれてもいいのに〜!」
程よい白さで柔らかそうな頬をぷくっと膨らませて
大袈裟な反応をみせる村前さん
「これでも頑張ってるんだけどね」
肩を竦めてみたがお許しは出なかった。
「その辺にしてやれよ〜村前〜」
「店長〜お!それは今日の夕飯ですね!これはこれは美味しそうなパスタ!!!」
興味が呼び名の話から店長が持ってきた賄いのパスタに移ったようだ。
不満が含まれた視線から今度は打って変わって
キラキラと瞳を輝かせる村前さん
既に目の前のパスタに釘付けになっている。
そのコロコロ変わる表情に、あのミルクティー色を思い出した。
なに、考えてんだ。
「ほい、伊澄の分」
「…、ありがとうございます。」
「んじゃ、」
「いっただきま〜す!」
「……はえーな。」
店長から自分の分のパスタを受け取り席に着く
カルボナーラか、いい匂い…
家に帰っても大体は出来合いのコンビニ飯だし
誰かと食べるのなんてここ以外じゃ全くと言っていいほどない
だからどこか擽ったい気持ちになる。
みんなでいただきます、をする前に村前さんは我慢ができない!と食べ始める。
いつも思うけれど本当に美味しそうに食べるな
「おいっし〜!店長!これなら店開けますぜ!!!」
「おうそりゃそうだろ!だから店開いて、店長してんだろ?」
「はっ!そうだった。さっすが店長〜!」
「お?そんなに褒めちゃう?まあ、その通りなんだけどな??」
二人の他愛無いやり取りになんだか既視感を感じる……
満更でもなさそうな顔で店長はそれほどでもあるし?とデレデレしている。
「ん、美味しいです。」
クリーミーな味わいが柔らか過ぎないパスタに合う
偏食とまではいかないがそんなに食に興味が無い俺でも美味しいな、と思う。
「てかてか、伊澄くん今日なんかあった?」
「え?」
前村さんはもぐもぐと口にいっぱいに頬張って
リスみたくなっているのを必死に飲み込んで話そうとする。
「ぷはっ、んー、なんか今日機嫌良さそうだったからいい事でもあったんかなって!」
女子高生というか、女の人は勘が鋭いってよく言うけれど
こういうとこなのだろうか
特に楽しいことはなかったはずだけれど……
「あー、それ俺も思った!なんかいつもよりやわっこい感じするよな〜」
「だよね!」
店長までそう言い始める。
何となくめんどくさい方向に話がいきそうなのでそうそうに話題を変えてしまいたい
しかし、そうはさせないと言わんばかりに
「あれか、こないだの告白少年となんかあったか!」
「え、なにそれ!!伊澄くん告白されたん!?」
私聞いてないよー!?と騒ぎ出す村前さん
このおっさん、プライバシーってもんを知らないのか
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