アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
-
「なんで一緒に茶飲んでんだよ!?」
「小僧、急に大声を出すんじゃない」
「いやあ、あったまりますねえ〜」
店の奥にある居間でなぜだか三人で茶を啜っている。
何だこの状況……
そもそも「知り合いなら丁度いい、坊主も茶飲んでくか?」とか爺さんが言い出すのがおかしいだろ!
それに対して金井も「いいんですか!?」と目を輝かせる。
これではやめろと言えない。
「それにしても、店主さんと二葉さんはどう言った関係なんですか?」
「こいつはちっせえ頃からなんかある度にここに逃げてくんだよ。昔っから可愛げはそんなになかったが、最近は益々可愛くねえ。」
「おい爺さん、人の個人情報をペラペラ喋るなよ」
言わなくていいことを喋り始める爺さんをジロリと睨む
が、そんなものは関係ないと話は弾む。
俺を除いて
俺の知り合いにはプライバシーを守る人間はいないのかよ…
「二葉さんの小さい頃!すげ〜可愛いんでしょうね!」
「ちと待ってな、確か2階に写真が残ってたはずだ」
「ほんとですか!?見たいです!」
「はあ!?おい、爺さん!!!」
よっこらせ、と爺さんは腰を上げ二階に向かう。
追って立ち上がろうとするが着いてくるなと一言
爺さんに言われてしまえば俺は何も出来ない
俺の中にここでは爺さんが絶対という刷り込みがあるから逆らえない
と、
「…」
「……。」
視線を感じる。
無視だ無視
相手をしたらろくな事にならないだろうと踏んで、視線を下げる。
「……」
「…………。」
「……」
「っだあ!!!うるせえなんなんだよ!!!」
「え!俺なんも言ってないよ!?」
「視線が!うるせぇ!!言いたいことあんなら言え!」
そしてまたもや自ら墓穴を掘る。
最近こんなんばっかだな
「何騒いでやがんだ。」
そこへやっと爺さんが戻ってきてホッとする。
危うく答えなくていいことを答えそうになっていたところだ。
「ほれ、これが小僧の子供ん時だな」
「ちょ、マジで持ってきたのかよ…」
「うわー!可愛い!?すっげ、女の子みたいっすね」
数枚の写真を机に広げてみせる爺さん
なぜか得意げな爺さんと目を輝かせる金井
イラッときたのは仕方ないと思う。
「悪かったな、女顔で」
「ハッハッハ、確かにこの頃はしおらしい嬢ちゃんみたいだなあ!」
傑作だ、とでも言うかのように爺さんが笑う
コノヤロウ……
「これが小学生くらいで、こっちは中学くらいか?この頃の小僧は写真撮られるのが好きじゃねえからな、そんなにねえけど。ほら全部しかめっ面だ」
爺さんはブサイクだろう!としかめっ面した写真の中の俺を指さす。
ジジイ、いつまで笑ってやがる
決して口には出さないが心の中で罵る。
「しかめっ面でも綺麗ですよ〜……ん?でもこの写真は笑って、」
一枚の写真
記憶の中では一番新しいもので
それと同時に俺の中では一番懐かしく感じる写真
なんで、こんなもん残ってんだ。
カメラに向かって少し照れ臭そうに
けれど幸せそうに笑う自分
でもそれはカメラを見ているんじゃなくて、その先の…
思考を無理やり放棄し
金井の手からその写真を奪い取って、破り捨てる。
写真を持っていた金井はわっ!と驚きの声を漏らすが俺はそれどころではなかった。
「爺さん、悪い。俺もう帰るわ」
「……。」
金井は一人困惑の表情を顔に浮かべている。
これ以上何も言う気になれず直ぐに荷物をまとめて出口に向かった。
店の戸を開けようとした時
普段は何も言わない爺さんが口を開いた。
「小僧、お前ぇはいつまでそこにいる」
何言ってんだよ
そう言葉にしようとしても音にはならなかった。
そこにいる?
何言ってんだ、爺さん
俺はちゃんと前に進めてるだろ
「普通、がそんなに大事なもんかねえ」
逃げ出すように店を出た。
普通が大事か?
当たり前だ。
だって俺はそうやって教えられてきたから
そうじゃないと、生きる意味すらないんだって
でも、本当はわかってる。
わかってる。
俺はどう頑張ったって普通にはなれなくて
今も昔も変わらず
普通じゃないってことを。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
15 / 302