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夢はそこで終わる。
現実と夢との境目が曖昧になり
嫌に鼓動は早く視界は滲み浅い呼吸を何度も繰り返す。
ひどい時は汗だくになって起きることもあった。
夢はここで終わりだがこの話には続きがある。
俺はそれまで通っていた高校をやめることになった。
あんな状態で通い続けるのはまあ無理だろうなと思ってはいたが
俺はいいとしても学校側と両親がそれを許さなかった。
そして、それから始まったのは再教育という名の躾だった。
ひたすら両親の望む普通になるための教育を受ける日々
病気のように扱われ、薬やカウンセリング、色々なものを試される毎日
それでも普通になれなかった俺は見放されたんだけどな
それは納得でも諦めでもなく、放棄だった。
思い返せば息子だからとよくもまあそんなにやっていたなと
今では他人事のように思う。
とにかく両親は俺を見放した。
正直その方が俺としては楽だった。
干渉されてお前はおかしいと言われ続けるなんて
俺にはもう限界だったんだ。
そもそも病気なのかもわからないし
俺の両親はそう思ってるけれどそうじゃないっていう意見も少なからずある。
もう、わからなくなっていた。
その頃にはもう全部どうでもよくなっていたから
しかし、あの人たちは放棄したとはいえ
俺を自分たちの手の届く範囲に置きたがった。
同性に好意を抱く普通じゃない息子が
今度は何をするかわからないから仕方なく監視をしている、といったところだろうか
その真意は分からないけれど、きっとそういうことなんだろう。
幸いなことに俺の家はそれなりに裕福な家庭だった。
マンションの一室を渡され必要最低限顔を合わさないのが暗黙のルール
今の俺はあの人たちの描く必要最低限の義務を送っているだけ
自分の意思がそこにあるかは定かではない
要は、高校と大学の卒業資格を取る事
それさえ出来れば親の義務が終わると考えているようで
その後は好きにしろとのことだ。
散々干渉してきたくせになんなんだよ。
大学卒業後も就職は出来たとして
結婚は無理だろうし、縁が切れるなら俺もこれ以上誰かの目を気にして生活することも無くなるしまあいいか。
再教育を受けていた間も父と縁のある店長
仁さんの監視下ならと働くことを許されていたため、自分の金にもそれなりに余裕があった。
学校も行かず病院とバイトの行き来
両親に言われたままにただ言われた通りにしていただけだったから
金なんて使わなければ貯まる。
部屋も自分の金で借りると言ったが
やはり色々と信用ならないようで断られた。
我がことながら、会いたくもない相手の監視をしなくちゃいけないというのも可哀想だなと思う。
仁さんは諸々の事情を把握した上でレールを敷くわけでもなくただ見守ってくれている。
結局人生などなるようにしかならないのだから俺の好きにしろ、と
仁さんにもあの店にも本当に感謝している。
多少ひねくれたとはいえ
今でもちゃんと自分でいつづけられたのはあの居場所があったおかげだ。
まあ、感謝の言葉なんてちゃんと口にできた試しはないけれど
、
「……、」
「あら、目覚めた?うなされてたみたいだけど大丈夫?」
「えっと、」
「保健室よ。貴方、廊下で倒れちゃったみたいなのよ。お友達が二人でここまで運んでくれてね?」
目が覚めた時に真っ先に映ったのは白い天井に閉じられたカーテン
物音で気づいたのか保健医らしき女性の一言の後、カーテンが開いた。
俺がここにいる経緯を簡単に説明してもらい、何とか現状を把握することに努める。
「すみません、ご迷惑をおかけしました。」
いくつか業務的な質問を繰り返した後
もう大丈夫だと伝えてまた二言三言、言葉を交わし保健室を出る。
失敗した。
ここ最近、雨ばっかでろくに寝てなかったからか
時間を確認しようとスマホに手をかけた時
ふと、あの保険医の言葉を思い出した。
そういや、あの人さっき俺を運んだの二人って言ってなかったか?
最後に一緒にいたのはたしか小森だけだったはず
考えて首を振る。
嫌な予感というのは当たるものだ。
保健室を出て少し歩いた先の廊下にある長椅子
見知った姿が目に入った。
柔らかなミルクティー色が揺れる。
「二葉さん」
ほらな、嫌なことってのは本当に当たるものなんだよ。
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