アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ミルクティー色の、追想
-
一目見た時、綺麗だと思った。
大学の騒がしさに似合わない凛と咲く花みたいだと
同じ年くらいの
しかも同性の男に綺麗って言うのは変かもしれないけれど
俺は何故か目が離せなかった。
気づいたら声をかけていて
『一目惚れしました、俺と付き合ってください!』
何にも興味がないと言いたそうな瞳は大きく見開かれ
驚いた顔は綺麗と言うよりも少し幼さを感じさせる可愛い顔だった。
俺が好きだと思ったのは小学生の時も中学生の時も
もちろん高校生の時だってふわふわで柔らかくていい匂いのする女の子だ。
理解があれどまさか自分が男の人を
なんて考えたこともなかった。
そりゃ学校っていうコミュニティの中には中性的な顔立ちで綺麗めのやつだって、イケメンと呼ばれるかっこいいやつはいた。
それでも見惚れてしまうほど綺麗なんて思ったことは無かった。
出会った次の日
あなたの苗字を知った。
名前は教えてくれなかったけど
押しに弱い二葉さんは心底嫌そうな顔して渋々教えてくれた。
顔に似合わず、なんて言ったら二葉さんは怒るかな?
けれど低く澄んだ声と口の悪さに
この人は俺と同じ男なんだと改めて思った。
柔らかくない筋張った細い指とか
密かに香るタバコの匂いは気になるどころか
それが当たり前で必要だというみたいにストンと胸に落ちる。
出会って一ヶ月
学内で見かける度に話しかけた。
一人の人に夢中になることなんて今まで無かったから自分でも少し戸惑ったけど、それでもどうにか近づきたくて必死だった。
二葉さんは初めこそ警戒心の強い猫みたいだったけど
気を許してからはなにかと無自覚で無防備なことが多いみたいだった。
天然タラシってやつかな
でもどこか壁を作ってる。
壁ってほど分厚い訳じゃなくて
それこそ紙切れ一枚くらいで線引きしてる。
それも無意識だ。
小森と親しげに会話してるのとか正直嫉妬した。
俺の知らない二葉さんがいるのは当たり前だし、学部も違う。
でも羨ましい
小森はいい奴だし昔から知ってるけどどうしてもずるいと思ってしまう。
だからあの時、初めて笑顔を見た時
可愛い可愛いなんてはしゃいで誤魔化してたけど本当は違う
もちろん初めてみた二葉さんの笑顔は可愛すぎた。
形のいい眉を少し下げて、
血色のいい赤い口元に弧を描く様に不覚にも胸が鳴った。
本当に綺麗だと思った。
そんな気持ちを隠すために可愛い可愛いと叫んでおどけてみせる俺に
知ってか知らずか冷めた視線が送られる。
その表情も綺麗だった。
気まぐれに振ってくれた手のひらに心が騒ぎ出す。
次はいつ会えるかな
なんて恋する女の子みたいだと苦笑が零れた。
はじめは一目惚れと言いつつ、ただ興味を持ってるだけだと思ってた。
自分で言うのはアレかもしれないけど
俺は恋愛というものに困ったことは無かった。
そもそも本気の恋っていうものもよく分からなかった。
それはモテるモテないとかそういう話じゃなくて
好きだと思ってる人は可愛いと思うし
好きと言ってくれる子には応えたいと思う。
でもそれは可愛いと思うだけで胸が高鳴ったり痛くなることは一度も無かった。
終わる時も円満
最後にはそこそこ理解がある友人として別れてきた。
そこに不満もなければ後悔もない
だから追いかけようなんて思ったことも無い
けれど二葉さんは同性で、顔は綺麗だけど女の子らしさなんて無くて、
どちらかと言うと男らしい感じ
それでも気になる。
こんなに一人の人を気にするのは初めてで
本当に興味だけなのかなと疑問を持ち始めた。
気を引こうとして一目惚れなんていったけど
あの時の一目惚れっていうのは好きって気持ちと多分違った。
でも気づいたら早く会いたくて
話したくてもっといろんな顔が見たいと思っていた。
小学生の時とも中学生の時とも高校生の時とも違う好き
可愛いだけじゃなくて、もっとほかのなにか
言葉にしようとするとドロドロに溶けて大好きないちごみるくよりもずっと甘い
心臓がうるさくてそれを必死に隠したくなる。
それが、俺の初めて恋だ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
32 / 302