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自分が器用な方だとは自負してる。
一般論をそこまで気にするわけじゃないけれど
もしかしたら二葉さんに迷惑がかかるかもと思うと
なかなか一歩が踏み出せない
なんせ男同士
俺でも未知の世界
俺こんな遠慮するやつだったっけ?
実は器用ではないと気づいたのはその次の日だった。
、
大学に入ってからよくお世話になってる現像屋さん
ちょうど頼んでいた写真が出来上がってる頃だと思い出し
引き取りに行ったあの日
「爺さん、また包装忘れてたぞ」
「ん?ああ、そうか」
店の奥から親しげに店主に声をかけ顔を出したのは
俺の想い人だった。
何やかんやで一緒にお茶を頂くことになり
昔の二葉さんの写真を見せてもらった。
無愛想なのは小さい頃からみたいで
それでも幼い彼は今まで見たどんな子よりも可愛かった。
決してそういう目で見てる訳では無い
ただ可愛いなあって感じ
本当、そういう趣味じゃないから!
と、
一枚だけ、今とそんなに変わらない彼の意外な表情
目線の先にいる誰かを想うように笑う
見たこともない表情
綺麗とも可愛いとも違う"誰か"に向けた笑顔
腹の中で嫌な感情が渦巻いた。
ドロドロとした口では説明出来ないそれは
きっと嫉妬と呼ぶのだろう
二葉さんは俺の手からその写真を奪い取りそれを破って捨てた。
その行動にも驚いたが、それよりも気になったのは
二葉さんのいまにも泣き出してしまいそうな顔
お爺さんと二葉さんの話はよく分からなかったけれど
二葉さんの抱える何かを垣間見た、気がする。
お爺さんと二人きりになった後
二葉さんについて聞いてはいけない気がして俺は何も言えなかった。
ただ
「あいつは不器用すぎる」
と呟いたお爺さんの声が聞こえた。
数日たっても忘れられないあの写真
俺が撮るのはキラキラした写真
人でも景色でも無機物だって輝いてる瞬間が一番最高だと思うから
でも、あの二葉さんの写真ほどキラキラと思った瞬間は俺は見た事がなかった。
羨ましい。
俺も撮りたい。
もっと近づきたい。
色んな表情をみたい。
願望は止まることを知らず気を抜いてると無意識に手が伸びてしまいそうだった。
自覚した途端に熱を帯びる心臓
バクバクと音をたてるのは生きている証ではなく
全身で好きだと叫んでいるみたいで
今まで取り繕っていたものが崩れ始める。
これは、ダメなやつだ。
姿を見ればすごく嬉しいと思う。
しかし、それと同時にまともに顔なんて見れなくて
フィルターがかかったみたいに二葉さんは輝いて見えた。
一緒にいると意識してしまって談笑なんか無理だった。
少し前の俺よ
どうしてあんなに気安く話しかけられたんだ!?
過去の自分に嫉妬するくらいだ。
人を寄せつけない、そんな雰囲気を持つ彼も
出会った頃と比べて最近は柔らかくなったなあと思う。
佐伯のバカと話してるのをみるとため息が出るし
今すぐ駆けつけてその間に割り込みたくなる。
小森と真剣に、でも少し楽しそうに話してるのをみると
胸に何かがつっかえたようにモヤモヤとする。
友達、加えて過去の自分にまで嫉妬する未来なんて
誰が予測していたのだろう
面白半分、興味半分で近づいた自分への罰とでもいうように自分で自分の首を絞めていく。
気がついたら俺は二葉さんを避けていた。
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