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ガチャガチャと音を鳴らしながら扉に何とか鍵を差し込み
部屋に滑り込むように帰宅する。
時刻は既に九時を回っていて一限には出られそうにない
心を落ち着かせるためシャワーよりも先に煙草に手を伸ばした。
「はあ、」
一口吸うとさっきよりは少し落ち着いた気がする。
家に着くまでの電車の中でずっと考えないようにしていた。
けれど、いくら時間が経とうがあの夢が頭から離れることはなかった。
夢なんてろくなもんじゃないと思う。
こんな夢見てあいつとこれからも今まで通り接しろって方が無理な話だ。
煙草もまだ長いうちに灰皿に押し付け
タオルと着替えを用意して風呂場に向かった。
ザァーっと音を奏でる温めのシャワーを頭から浴び水が排水溝に吸い込まれるさまをじっと見つめる。
鏡に映った自身の体を見て女には見えないよな、と思う。
撫でても膨らみも柔らかさも感じない薄い胸
痩せているなんて言えば聞こえはいいが日焼けもしていない骨ばった白い肌
どこからどう見ても男のそれだ。
鍛えてもいないから筋肉がついてるわけがなく
どうしようもなくただの痩せた男の体だ。
別に女になりたいわけじゃない
その身体を羨ましいとも思わない
しかし、普通に男から求められるのは女のそれで
そんなものに自身が敵うとも思わないし思えない。
そもそも比べようとは思ってもいないのだけれど
ただ、自分が欲しいというものに
求められて求めることも出来ることには単純に羨ましいと思ってしまうのは仕方が無いことだろう
ああ、本当に醜い
いくら歳を重ねたって変わらない自分は普通じゃないという事実
蛇口を閉めるとまるで悲鳴のような音が鳴る。
苦しい、苦しい、苦しい
あんな思いもう嫌だ、うんざりだ。
それでも、みっともない程に求めている自分がいる。
風呂場を出て身体に付着した水滴を拭っていく。
鏡に映った自分の顔はひどく疲れたていて
健康的とは言えない自分の体
そして、そこに刻まれた一生消えない火傷の痕
鏡の中の俺が責めるように視線を寄越す。
お前は普通じゃないんだから独りでひっそりと迷惑をかけないように日陰で暮らせ、と
最近は周りが賑やかだったから忘れていた。
俺はあいつらとは違うんだ。
普通のやつとは違う
いつまで夢を見ているのだろう
本当に気持ち悪い
自嘲的な笑みを零して鏡から目を逸らした。
、
本日二度目の学校に着くとそのまま講義の行われる教室に向かう。
二限の講義も諦め、三限の講義のみ出ることにした。
写真のモデル期間はあと二週間
それっきりだ、もうそれで終わりにしよう。
今までの全部を無かったことにして、できなかったらまた逃げてしまおう
変わることなんてできない。
前に進むことなんてできない。
でもそれでいい。
他人とこれ以上関わらずひっそりと迷惑をかけないように生きれたらそれでいいじゃないか
これまでと何ら変わらない
最近が賑やかでおかしかっただけ
ぎゅっと何故か痛む胸は知らないふりをして席に着く。
金井との約束終了まであと、二週間
六月だというのに俺を嘲笑うかのようにカラッと晴れた空に舌打ちした。
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