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自分でもどうかしてると思う。
それでも、いまは誰かに縋っていなければ
立っていられそうになかった。
勢いよく伸ばしすぎた腕は空を切り
そのまま金井の上に身体の重さを預けるように沈める。
突然の重みに耐えきれなかった金井はバランスを崩し俺の下敷きとなった。
「うわっ!?…いったた、って、伊澄さん!?」
「…悪い」
「…」
金井の胸に顔を埋めてそう一言零せば
それ以上何も言葉を紡がず背中には温かい腕が回される。
走ってきたのか汗と香水とは違う石鹸の香りがする。
緩く巻かれた腕の温もりにひどく安心している自分がいた。
どうしよう、どうしたらいい
そんな絡まった糸みたいな思考が解けていくのが感じる。
どうしてか安心するその腕の中ではもう考えなくていいと言われているようで、トクトクと聴こえる心音を耳に、身を任せる。
と、
「落ち着いた?」
いつもは俺の目線よりも高い位置にある双眸が見上げるように俺を見つめる。
だんだんとクリアになっていく思考にハッとした。
何してるんだ俺!?
謝ったとはいえ押し倒してこいつの胸に顔を埋めて匂
いを嗅いで落ち着くとか……!
ただの変態じゃないか!!!
羞恥に追い打ちをかけるように目元に触れる骨ばった指先
「っ!」
「先輩に何か言われた?大丈夫?」
慈しむみたいな柔らかく優しい視線と硝子物を扱うように慎重な
けれどしっかりと確かめるようにそっと触れる温もり
その大きな手のひらで包み込まれてしまえば顔を引いて逃げることも出来ずただただ羞恥に頬を赤で染めることしか出来なくなる。
そんな俺を見てふわっと笑みを深めて
「かわいい」
なんて、毒でしかない
熱を増す頬に耐えきれず俺は両手を突き出して金井の口を塞いだ。
「い、いから離せ!」
「んーんーんー!」
「そこで喋るな!」
あろう事か口を塞いだまま金井が喋るものだから
吐息を直に感じて、ビクッと肩が跳ねる。
俺の様子を楽しいと言わんばかりにその行為を止めない金井に羞恥と苛立ちでつい手が出てしまう
「……っ!」
「離せバカ」
横腹に軽く拳を入れれば唐突な衝撃に驚いたようで今度は金井の肩が跳ねた。
渋々といった様子で後ろに回されていた両手が離れていく。
すぐさま俺は起きあがり金井から距離を取った。
「いったた〜」
あまり痛がってなさそうにそう言ってはいるが少し悪かったかな、と思わなくもない
けれど、こいつもこいつだからおあいこだ
と自分に言い聞かせ気にしない振りをする。
「も〜!ちょーっと嬉しくなって調子に乗っただけじゃん!」
「度が過ぎる。」
「でも、伊澄さんが先に抱きついてきたんじゃん!」
「抱きっ!……っ、それ、は……」
そうだけれど……
さっきの俺はどうにかしていただけだから忘れて欲しい
なんて虫が良すぎるか?
でも、正気だったらこんなことしていない
言い訳は出てくるがそれは言葉にならない
「んで、落ち着いた?」
コテン、と床に胡座をかいて首を傾げる金井
これがあざといってやつなのか…
成人男性に可愛いなんておかしいはずなのに今の金井は可愛く見える。
……かわいい?
「あ、ああ。」
なら良かった、そう言って背中を摩る金井
そういえば、俺思いっきり床に押し、倒したよな?
その際確か結構な音が響いていた。
余裕がなかったとはいえ、痛かったよな…?
「…その、大丈夫か」
「ん?」
「倒れた時、背中打っただろ…」
「あぁ、平気平気!こんなん慣れっこだから〜」
佐伯とよくプロレスごっことかしてるし〜と逆に気を使われてしまえば
余計に罪悪感が募っていく。
「……った」
「ん?」
一度で拾ってもらえなかった言の葉をもう一度形にするのに、
収まりかけてた羞恥が再び襲う。
じっと見つめてくる視線から逃げるように少し視線を下げてさっきよりも大きめの声で伝える。
「だから…………押し、倒して……悪かった、って」
「…」
何も言わない金井に少し不安になる。
もしかして、怒らせた?
なんでこんなに金井の一挙一動にビクビクしてるのか
知りたくもないがそっと視線を向ける。
と、
金井はニマ〜っと頬を緩ませきって
今まで見たことも無いほど気持ち悪い笑みを浮かべていた。
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