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「伊澄さんっ」
「うるさい、黙れ」
ニヤニヤニヤニヤ、謝ったことが間違いだった。
こいつがそんなこと気にしないとわかってたのに
「まだ何も言ってないよ!?」
「顔がうるさい」
「え〜?」
非難の声こそあげているがその頬は緩みきっていて楽しそうだ。
とにかく、その気持ち悪い笑みを視界に入れないようにそっぽを向くが
また「伊澄さん」と楽しげに呼ばれる。
「うるさい、謝った俺が間違いだった」
「いやいや、そこは間違いじゃないよ?だって〜伊澄さんが俺をあんなに大胆に押し倒し……んむ、」
「黙れ」
体を乗り出しうるさい口を塞げばまた後悔
学習能力は人並みにあるはずだが
俺はこと金井に対しては全く発揮できないらしい
手のひらで吐息を直に感じてそちらにばかり意識を向けてしまう
背に回される腕にも気づかないほど
どうしようかと悩んでいれば
グッと背に回った腕に押され、乗り出していた身体はバランスを失う。
「なっ」
驚いた拍子に外れた手は少し大きめの金井のもので握られて一纏めにされてしまい逃げ道はなくなる。
「いーずみさん」
「っ、はな、せ」
俺を見下ろす金井は
んー、と少し考える素振りを見せたと思えばふふっと口元には綺麗な弧
頭は回らなくて、押し倒されてる現状に今更気づく。
抗議しようと口を開けば熱く大きな手のひらが今度は俺の口を塞いだ。
「っ」
「だめだよ?そんな無防備にしてたら」
いつものふわりと笑うような笑みではなく
妖しげに艶っぽいそれを見せる。
こんな奴、知らない
いつもと違う金井に少し怖くなる。
知らない
俺の知ってる金井はもっとアホみたいに笑うやつで
こんな風に笑うこいつは知らない
「ん、」
声を出そうとしても塞がれた口では言葉にならず
代わりに鼻から抜けるような音が零れるだけ
その音が余計にこの状況を物語らせる。
少しでも意識を逸らそうと視線を泳がすが
「ダメ、伊澄さん。もっとこっち見て?」
優しくそう言葉を紡がれれば俺の体は支配されたようにその通りに動く。
「ん、いいこ。」
「っ」
なんつー甘ったるい声を出すんだ。
叫ぶこともできないまま急激に体温が上がるのを感じる。
「あはは!顔真っ赤、可愛い〜」
口を塞いでいた手がやっと離れた。
かと思えば直ぐにその手は俺の頬を撫でる。
こいつ、すぐ触れる癖でもあるのか?
なんにしても日本男児の奥ゆかしさって言うのを何処に置いてきやがった!舐めてんのか!?
意味のわからない言葉の羅列は溢れ出てくるのに
肝心な言葉は絞り出すようにしか出てこない。
「い、い加減、手、離せ。あと、退け」
「あ〜ごめんごめん、つい楽しくて」
えへへ、なんて可愛く言ってみせるがまったくもって可愛くない
小型犬の可愛い犬なんかじゃなくて躾のなってない大型犬じゃないか!
腕の拘束は解かれたものの一向に俺の上から
退く気配がない金井にイライラが募ってくる。
「おい、早く退け」
「ん〜」
「んーじゃない!」
楽しげにケラケラ笑っていたかとスっと真顔になる。
この切り替えの速さには驚くが今はそんなことどうでもいい
「金井、いい加減に、」
「ねえ伊澄さん」
しろ、と続けようとした言葉は真剣な声に遮られた。
そっと顔の隣に両の手置かれ、囲われてしまえばもう逃げ道はない
「なに、」
見下ろされて気分がいいやつはいない
ムスッとして応えれば
「そんな無防備にされたら俺だって期待しちゃうよ?」
不意に見せた少し耐えるような表情
その真意など俺には汲み取れない、けれど
「逃げないんだ?」
緩く持ち上げられる口元に腹は立つ
逃げられない、の間違いだろ
これは俺の意思じゃない
だって、こんな風に閉じ込められれば俺に逃げ道なんかなくて
抵抗だってできない
鼓膜を揺らす甘い声と落とされる影
そして、その紅い唇がいやに生々しかった。
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