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ひねくれ者の、出会い
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「んでさー、あそこのバンドのボーカルが……」
「いっずみさーん!」」
靴を鳴らし小走りで近づいてきたのは変わらないミルクティー色の髪をふわふわと揺らす男
結局昨日はあのまま少し話をして連絡先を知らないことに二人で笑いながら交換した。
そのまま流れで金井の家に泊まらせてもらい
何も無かった。
本当に何も無かった。
そのことに残念に思ってなんかいないけれど
「もう帰るの?」
「ん」
「そっか〜今日はバイトだよね」
「あぁ。だから今日は無理」
「おっけー、じゃあまた明日ね!また連絡するから!」
「わかった」
またね〜と手をおおきく振りながら校舎の中に消えてく背中を見送る。
と、
「あいつ俺の存在を全て無視しやがったな!?」
それまで黙っていた佐伯が叫ぶ
二人で最近ハマってるバンドについて話していたのだが
佐伯は目が合ったにもかかわらずいないものとして扱われたことに怒っているらしい
俺もされたら怒るだろうしこの反応はあたりまえか
「許さん、翔太のくせに生意気だああああ!いずみんまたね!俺はあいつを殴りに行ってくる!!!」
「ん、じゃな」
うおおおおおおお!と雄叫びを上げながら金井が消えた校舎の中へ走っていく
元気だな……
途端静かになる周りに、俺もさっさとバイトに向かおうと足を進めた。
昨日まで撮影の約束を待ったして貰っていたが明日から再開する予定だ。
少し時間がかかったため、金井の期限はもうそんなに日にちは残ってないようだ。
あと九日
それが残りの約束の期間
今の今まで悩んでいてあと九日で撮れるのだろうか
少し心配だがそこはもう金井に任せるしかない
、
「おはようございます」
「おーす、伊澄ちょっと早いけど入れるか?」
「はい。すぐ準備します。」
出勤時間よりかなり早めに着いてしまったがタイミング的には良かったみたいだ。
直ぐに自身のロッカーから指定のエプロンを身につけ身だしなみをチェックしてホールに入った。
既に来ているバイトの面々と引き継ぎをして対応を代わる。
いつもより賑わっている店内に何かあっただろうか、と思ったが特にこれといって思い当たる節はなかった。
「んじゃ、まずは簡単なことからな」
「はい!」
見知らぬやつが店長と話してるのを見て新しい人入ったのか、と考えていると
バチッ
「……?」
目が合う。
逸らすのもなんか悪いかと思ってそのまま見つめていればニコリと人懐っこそうな笑みをされて金井を思い出した。
ハッとして愛想笑いだけ返すと自身の仕事に戻る。
やっぱり自分は浮かれてるみたいだ
しっかりしろよ、俺
対応に追われていれば自然と時間は過ぎていき
気づけばもう閉店時刻
「伊澄、お疲れ」
後片付けをしてると店長に声をかけられる。
そしてその隣には人懐っこそうな笑みを浮かべる男
「ああ、はい。今日はなんか忙しかったですね」
「おう、昨日の今日で新しいやつ雇ったからどこから仕入れたのか常連さん達が顔出しがてらに来てくれてたみたいなんだよ」
おら、先輩に挨拶しとけーと店長の隣にいた男が口を開く
「新しく入りました、新木上総です!大学2年でっす!よろしくお願いしまーす!」
耳のピアス穴に目が行くが差し伸べられた手に一応俺も手を出す
「二葉だ。俺も二年、よろしく」
「そうなんすね!二葉さん下の名前は?」
「タメでいいよ。下は伊澄」
「んじゃ、お言葉に甘えてバイト中の時以外はタメでいかせてもらうわ。伊澄ってぴったりな綺麗な名前だなー!俺そっちで呼んでもい?」
「お好きにどーぞ」
「やった!」
サラッとした黒髪を揺らして笑う口元に少し尖った八重歯を見つける。
なんか………
見た目は全然似てないのにどこか金井と重なる。
犬っぽいからか?
なんて考えていると
「とりあえず研修中はお前が面倒見てやって、こっちでもフォローするけど」
「わかりました」
話半分に頷いていればめんどくさいことを押し付けられてしまった。
ただでさえ人との関係を築くのが苦手だと言うのに
きっと店長はわざとなのだろう
世話焼きというかお節介というか
こと対人関係に関しては余計なお世話だ、と言いたいけれどそんなこと口が裂けても言えない
「改めてよろしく!伊澄ー!」
「ああ。こちらこそ」
この出会いは吉か凶か
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