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ひねくれ者の、
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狭いエレベーターの中で考えるのはこの後のこと
一秒一秒がいつもより長く感じる。
何も無い、と思う。
でも、もしも
そう考えてるうちに目的の階に到着する。
廊下はいかにもな感じのピンクの壁に赤い絨毯、誰かとすれ違わないかとビクビクしながら進む
「601、2、3、4……あった605」
「……」
どんな部屋を選んだのか知らないが、悶々と考えているのは俺だけのようだ
触れるだけのタッチ式カードキーで鍵を開ける。
「はーい、伊澄さん入った入った」
「ちょ、押すな」
後ろから押し込むように押されれて足をもつらせながら中に入る
どんなアブノーマルな部屋かと思えば目の前に広がるのは普通のホテルの部屋だった
「なるべく普通そうなのを選びました!」
褒めて褒めてと犬がそうするように耳としっぽが見えた気がする。
構えていた分拍子抜け、というのも変な話だが呆気に取られる。
「ああ、よく、やった?」
「へへ〜!もっと褒めてくれてもいいんだよ!」
「風呂入るか、」
「無視!?んでも俺はめげないけどね!」
後ろでキャンキャン一人騒いでる金井を放っておいて部屋を一通り見ていく。
中の作りは普通のホテルとそんなに大差ないのだろう。
違うところといえば、男二人で寝転がっても余るほどの大きなベッドと中にカーテンがついてるもののガラス張りとなっていて外から丸見えな風呂場くらいか。
普通のホテルと大差な…いや、大差ありすぎか
「伊澄さん、みてみて!」
「あ?……って、おま!何持ってんだ!」
「え?そこの引き出しに入ってた!」
金井が手にしていたのは俗に言う大人のおもちゃと言うやつで
趣味の悪い蛍光色のそれはぬめり輝いている
電動式のようで電源を入れるとヴィンヴィン音をたてながら怪しく揺れ動く
それを見ておー!なんて言ってる金井の頭を叩いて持っていたものをゴミ箱に捨てる
「あー!伊澄さん何するの!?」
「いや、お前こそ何してんだよ…いいから風呂はいってこいよ」
呆れ果てて怒る気にもなれない。
それよりも濡れたままだと風邪を引きかねないと思い風呂を勧める、とじっと見つめられる
「なんだよ」
「着いてすぐお風呂なんて…伊澄さんのえっち!」
「……。」
「いっ!?いった!ちょ、伊澄さん!ごめんって!無言で蹴らないで!!」
「うるさい、お前はもう風呂にも入らなくていい。廊下で一夜を過ごせ」
ゲシゲシと腿裏やふくらはぎら辺を蹴りまくる。
何を言い出すかと思えば!!!
本当に馬鹿じゃないのか!?
「も〜、入ってくるから大人しくしててね?」
「お前だろ」
「あ、それとも一緒に入る??」
「……」
「だから無視はやめて!」
、
しばらくしてザーーっとシャワーの音がし始める。
カーテンを閉める閉めないでまた一悶着あったが今は内側からカーテンがされ中は見えないようになっている。
中からふんふんと鼻歌が聞こえてくる。
あいつホントに呑気すぎじゃないか?
大きなベッドに腰を掛けて一息つく
ズボンは乾いてるものの膝下を一度濡らしてしまってるので寝転がることは避ける
上半身を倒して天井の灯りをぼうっと眺めた
海での金井を思い出した。
あいつも人並みに悩みくらいあるよな
俺の前ではヘラヘラしててなんでも出来るやつ、みたいに思っていたけどあいつの弱ってる姿は存外悪くなかった
思ったよりも寝心地のいいベッドに意識が薄れる
そう言えば今日はいつもよりたくさん移動したりしたな、遠くに聞こえる水が壁にうちつけられる音と金井の声に瞼が下がってくる
だめなのに、身体は言う事を聞かない
すこしだけ、金井が戻ってくるまでの少しの間ならいいか
そう思い、抗えない睡魔に身を任せた。
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