アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ひねくれ者の、
-
「今まで、上総が欲しがるものは全部譲ってきたけど…「違うだろ。」っ!」
金井の話の途中で静かな怒りを含んだ声で新木が遮る
新木は掴まれていた襟元の金井の手が少し緩むとそれを見逃さず払い除ける
海の日にも聞いた金井が言ってたこと。
あの時は抽象的すぎてちゃんとしたことは分からなかったけど、いまなら何となくわかる気がした。
「お前は向き合いもせずに最低な方法で逃げてただけだ。」
「っ」
何も言い返さない金井。
言い返さないんじゃなくて、言い返せないのだろう
きっとそれは図星だから。
あの自嘲的な笑みを思い出した。
金井は言った「避けて逃げて結局残ったのは後悔だけだった」と
逃げるのがあとから苦しくなることを俺は誰よりも知っている。
「ここでも黙りかよ」
「お、れは…俺のせいで、みんなに迷惑かけて、だから、」
「違う。」
「え、」
「お前は迷惑かけたことで逃げたんじゃない、一番の被害者面して自分は可哀想って浸ってただけだ。」
「そんなこと、」
「…。」
金井は正直ものだから嘘がつけない
その証拠にこいつは今「そんなことない」ってたった一言が口に出来ていない
ああ、お前はほんとにアホだな
そんなふうに言われたら適当にあしらってしまえばいいのに
どこが器用だよ
どこまでも真っ直ぐでバカで大切なことに対して不器用すぎるこの男が
本当に愛しい。
「新木、その辺にして」
「はあ?いくら伊澄でも関係ない所まで首突っ込むなよ。また痛い目見るよ」
話の間にはいられていつもよりも荒っぽい口調で告げられる。それに怯むことは無い
みっともない姿を見せてしまったけれど俺にだって言いたいことはある
「あながち関係なくない。こいつは俺のだから、あんまし虐めないでやって」
「あ?」
「それに、嘘はよくないと思う」
「嘘?嘘ついてんのは翔太だろ!」
「っ」
金井のは嘘というより不器用なだけだ
それを言ったら新木もなのかもしれないが…
俺は自分が嘘つきだから嘘には敏感なんだよ
「金井のこと嫌い憎いって言う割には話してるのがとても楽しそうだよな」
「は?」
「なんか引っかかった言い方してるけど、要は相棒みたいな存在だったのにいきなり避けられて逃げられたりしたから悲しい、かまって欲しいくらいじゃないのか?」
「はああ!?どっからみたらそんな風に見えんだよ!?」
「俺からしたらどっからどう見てもそうとしか思えない」
昔どんないざこざがあったのか知らないけれど新木はちゃんと金井のことをわかってる。気付かないふりをしてるだけ
お互いの空回りの末の二人とも人を大切にするのが下手くそだ
俺が言えたもんじゃないけれど
「え、と…」
ぽかんと間抜けな顔した金井が俺と新木を交互に見る
「それに俺が無事なのが何よりの証拠」
「それは!」
「所々お人好しが出てる」
「〜〜〜!」
何か言いたそうにしながら何も言わない新木
きっと俺があのフラッシュバックのせいで色々できなかったと言いたいのだろうけど、金井がいる手前話していいか悩んでるってところか
やっぱりお人好しだ
お互い昔みたいを無意識に求めてるのに臆病で一歩進めてない。主に金井が、だけど、やり直せるものがあるならやり直せばいいと思う
そう思えたのは紛れもなく金井のおかげだ
だから、お前が悩んでるなら今度は俺が手を差し伸べるよ
「別に仲良し子良ししろなんて言ってない。ただ、お互いがお互いを思いすぎてるのに二人とも気づいてないのは傍からみたらアホにしか見えない」
「……」
「……ふっ」
俺がそう言うと肩を震わせて吹き出す新木
「あははははははははは!もう無理!そんな台詞なんで真顔で言えんの!?あは!やばいいいいっ、ふはっ」
「ちょ、上総、伊澄さんは本気で言ってくれてんだから!」
「それこそなおヤバすぎだろ!!」
「そ、そんなこと…ふっ、そんなことない、よっ」
「翔太も笑ってんじゃん!」
本日二度目の笑いの渦に巻き込まれた。
人がせっかく真面目に話してんのになんなんだこいつら
「お前ら、そこに直れ。一発ずつぶん殴る」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
77 / 302