アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ひねくれ者の、
-
「はー、もう伊澄面白すぎ」
「そんな笑われるようなこと言ってない」
「あーうん、そうかもね、もーいーよほんと。俺の負け、はーやだやだこれだからリア充は」
「リアっ!?」
「そーでしょ。じゃなきゃ、翔太は伊澄のこと俺にくれるもん」
「…。」
その意味を、正しくはきっと俺には理解できない
それは俺の知らない金井の話だから
たぶん、新木の口から聞くのも間違いだ
「あーあ、せっかくいいおもちゃが見つかったと思ったのに」
「上総…」
わざとらしいため息をついて金井を見つめる新木
真剣な瞳に俺は口を噤んだ
「言っとっけど、俺を除いてあいつらはお前のこと最高とは思ってても最低とは思ってないよ。そういうバカの集まりだったからね。まあ、俺はムカついてるし、全部なかった仲良くしましょとはならないけど、あれは許す許さないの話じゃないとは思う」
「ごめ、」
「俺達がお前に頼りすぎてただけ。それがお前の重荷になってるとも気づかずにな。そんで、俺もお前も馬鹿だっただけ」
「っ」
自らを嘲笑うような笑みは金井のそれに似ていた。
こいつらには俺が口出すことができない確かな絆みたいなのを感じて眩しく思うと同時に、
少しだけ、ほんの少しだけ、嫉妬する。
「それでも、お前のことはちゃんと相棒だと思ってたしお前のせいだとも思ってない。だからって逃げられ続けてたこっちの身にもなれってはしだ!」
「…。」
「だーから、油断してっと俺が伊澄のこと貰っちゃうからな」
ビシッと人差し指で俺の方を指してキメ顔でいう新木
「っ、それは、だめ」
「それは有り得ないな」
「伊澄、ちょっと空気読んで!?」
金井に被せるようすかさず否定する。
いい雰囲気だろうが、お前らの関係がちょっと人より良かろうが俺には関係ないし、金井は俺のだし
いつになく強気な自分に驚くがいまは放っておく
こういうのは勢いだと最近学んだ
「あーもー…こほん!さーてと、邪魔者は退散しますよーだ」
自身の荷物を取りに金井を押しのけて俺の近くに転がっていた鞄を手に取る
「あ、そだ。」
と、ぐっと耳に顔を近づけられこそりと耳打ちする
「アレのことは黙っててあげる。俺は時間の問題だと思うけどね〜」
「っ」
「ちょ!上総、伊澄さんに近づきすぎ!」
「うっせーよばーか。ばーーーか!!」
金井の伸ばした手が肩に触れる前に交わして扉の方に駆けて捨て台詞のように叫んで去っていった。
嵐が去っていった部屋では俺と金井が唖然とするだけだった
と、この状況になって思い出した。
そういえば俺、金井の連絡とかも断っていま気まずい状況だった…
静かな部屋が余計に気まずさが増す
さっきまで色々必死で忘れてたけど薬も盛られてたんだよな
今はなんともない、みたいだがもう切れたとみて大丈夫か…?
なんて一人で考えていると
「伊澄さん、」
名前を呼ばれる
心地のいい、俺が一番安心できる声で
それだけで俺は満たされる。
ぐるぐる考えてたことなんかどうでも良くなって俺はすぐに金井の方を向く
そこには少し不安そうな顔をした金井
考えていたのは俺だけじゃなかったみたいだ
それもそうか、連絡を拒絶されていつも受け身なこいつは普通の青年で
俺の特別だけど、何も特別じゃな人間じゃない
「ん」
「!」
腕を広げて見ればその意図がわかったのかすぐに顔が明るくなる
幻覚のように犬のしっぽみたいなのが見える
すごいブンブン動いてるな…
金井は走り出さないように我慢しながらゆっくりと近づいて俺を抱きしめた
ぎゅうっといつもより強い力に悪くないなと思い俺も金井の背に腕を回す
「伊澄さん、伊澄さんっ!」
「そんなに呼ばなくても、聴こえてる」
ぎゅうっと強い力に悪くないな、と思い
何度も呼ばれる響きに自然と熱を増す。
この温もりも、ぜんぶ、おれの。
噛み締めるように俺も抱きしめる力を強めた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
78 / 302