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ひねくれ者の、
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抱きしめられていたと思ったら途端に強い力で剥がされる
「わっ」
思いもよらなかった引力に声が出る
がっしり俺の肩を掴んで上から下まで丹念に穴が開くんじゃないかってほど見つめられる
「な、んだよ」
「ホントのホントに怪我とかないか見てるの」
「いや、服の上からじゃわからないだろ」
そう言うと魚みたいに口をパクパクさせる金井
急になんだと小首を傾げてみると
「そ、それは、脱がせてって意味ですか?」
「は?」
「いやだって!?え!?違う!?!?」
自分が言ったことと金井の言ってることが分かりボンッと顔が赤くなる
「んな!?んなわけなねえだろ!?!?」
「ですよね!?ごめんなさい!怒んないでー!!」
そういう意味で言ったんじゃないにしろ確かにそうとも取れる、か?
いやいや、断じてそう言う意味じゃない!
頬をかいて苦笑いしてる金井を目の端でちらりと窺ってみる
取り乱していてばかりでそういえばちゃんと金井を見てなかった。
何時ぶりだ?海の日からどれくらい経ったっけ
そんなに経っていないはずなのに、とても久しぶりに感じる
それに気づいてしまえばさっきの馬鹿みたいなやりとりなんか直ぐに忘れてすぐに触れたくなる
俺の視線に気づいた金井がふわりと花が咲いたみたいに微笑む
途端に暖かくなる心は単純だ
「伊澄さん、もっかい抱きしめていい?」
なんでもお見通しみたいなその眼差しに腹が立つ
でも、
「ん」
好きになった方が負け、惚れた弱み
とはよく言ったものだ。
その笑顔の前では俺の意地なんてどこにもなかったみたいに溶けていく
ベットに腰を沈ませた金井に手を引かれもう一度抱き締められる
いつもは自分より高い位置にあるふわふわなミルクティー色は今は自分の目線より下にあって
指を滑り込ませれば気持ちよさそうに擦り寄ってくる
「伊澄さんだ。」
「当たり前だろ」
「うん、そうだね…そうなんだよね」
弱々しくも嬉しそうな声に胸が鳴る
「ははっ、心臓すごいドキドキしてる」
「るせ…」
「最近わかったんだけどさ、恥ずかしい時はいつもより口悪くなるよね」
「っ」
胸元に擦り寄られながらそんなこと言われたら余計に心臓が早くなる
口を開けばボロが出てしまうから何も言い返せない
「よかった。」
「わ、」
二人分の重さにベッドが小さく悲鳴をあげる
引っ張られ互いに向き合う形で白い布に沈む
俺の手を引くのはいつも金井で、それは酷く心地がいい
「急に引っ張るな」
「嬉しいくせに」
「っ!うるさい!」
「否定しないんだ?可愛い」
「〜〜っ!」
「ちょっ、苦しい苦しい!」
からかわれいることと言葉の嬉しさで恥ずかしさは増す
ぎゅうっと金井の頭を抱えて半ば窒息させるみたいに力を入れる
そうすれば直ぐにギブアップとごめんなさいと言われ緩めてやる
ふん、人を馬鹿にするからだ。
嬉しさが残る頬を見られないように緩めても頭を抱えたままでいると金井が口を開いた
「ねえ、伊澄さん。こないだ海に行った時のこと覚えてる?」
「ああ。」
「そか、ちょっとだけまた俺の話聞いてくれる?」
「あぁ。」
「ありがとう」
そう言うとゴロンと仰向けになった金井
俺は上半身を起こしてその顔を見下ろしてみる
俺の影で暗く染まるその顔はやっぱり少し弱々しい
「でも、」
「うん?」
「無理して話はして欲しくない」
真っ直ぐ目を見ていえば金井は大丈夫、と一言だけ答えた
「俺さ、中学の時からバスケやってたんだ。地区大会とか優勝して、チームとしても俺自身も、そこそこ上手い自信があった。推薦でバスケの強い高校に入って、そこで上総と会ったんだ」
俺の知らない、
俺を知らない、金井の昔話
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