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ひねくれ者の、
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「んー、まあそりゃ俺のなけなしの忠告も意味をなさなかったみたいだけど」
「っ」
「それでも伊澄さんが無事ならよかったよ」
困ったように笑った顔は痛々しかった
そうだ、金井はそういう奴だ
俺は別になんともない。女じゃあるまいし、嫌だけど我慢すれば終わってしまうことだから
でも金井は違う
本当に起きたかもわからない事に自分じゃない俺が傷つくのを怖がるし嫌がる
守れなかったことに一番責任を感じるやつなんだ
気づいたら一層胸が締め付けられた
俺だって守られるだけなんて嫌だ。
そんなやわじゃないし…でも、想像してみればわかる
俺も金井が傷つくのは、嫌だ。
俺が傷つけるならともかく他の誰かからなんて、絶対に嫌だ
「…ごめん、」
「そんな落ち込まないで。何ともないならほんとにいーの」
「違う、」
「ん?」
鮮明に思い出せる記憶
そんなに経っていないのに随分昔の事のような気がする
「お前は俺に、俺の全部をくれって言った。だから、俺はもうお前のもんだろ…それなのに、他のやつに触らせたり、して、ごめん…」
「伊澄さん、」
ただの知り合い、友達からちゃんと恋人として隣に立てるようになったあの日
『俺に伊澄さんの全部をちょうだい』
俺の一番好きな声で、俺の一番のお前が言ったんだ
その日から、いや本当はもう少し前から
俺の一番はお前でいっぱいで
俺の全部は金井のものだから
「だから、ごめん。」
人に想いを伝えるのが苦手で
随分と前に諦めてから誰かと深く関わるのを避けてきた
どのくらい自分の思いが金井に伝わっているのかわからない
不安で不安で仕方ない。
沈黙が痛い、愛想をつかされてしまうかもしれない
俺はめんどくさい奴だと思う、
俺が金井の立場なら絶対俺なんか選ばない
なのにこのバカは選んでくれる
逃げても追いかけてきて
笑って許してくれる
俺は金井のだし、金井は俺の
すごく単純で難しい方程式だけどそれが本当に嬉しくて
離れてくなんて許せなくて、失うなんて絶対に嫌で
俺の一番は金井なんだよ
しばらくの沈黙の後
金井が口を開く
「そうだね、うん、許せない」
「っ」
「伊澄さんは俺のだよ。それは俺ももちろん同じ。それをベタベタと他のやつに触らせて怒ってないって言ったら嘘になる」
「、」
真剣な声に自然と体が強ばる
「でも、今回のは俺が招いたことでもあるし、むしろ俺のせいっていうか」
「金井は、悪くないだろ…」
「うん、そうなのかな、でもやっぱり上総であろう伊澄さんに手を出したことは許せないからそれはまた俺がちゃんと片をつけるとして」
伺うようにチラリと金井を見ればニコリと微笑まれる
微笑まれるなんて思ってなくてこれなら怒鳴られる方がマシだと感じてしまう
「怒ってるのはほんとだけどこのままは嫌だから仲直りをしよ伊澄さん」
「仲、直り…」
てっきり怒られると思っていたから金井が口をした言葉を復唱してなんとか理解しようとする
仲直り、仲直りってあれか、小さい子供が喧嘩した時に仲直り〜ってやるやつか?
今だけ頭脳のレベルが幼稚園児くらいに下がった気分だ
仲直りって、何するんだ??
グルグルと考えてめまいが置きそうな俺に偉そうで腹の立つドヤ顔の金井が言う
「その代わり条件があります!」
「条件…」
言われたことを繰り返す人形見たくなる俺をみて金井はニヤリと悪戯な笑みを浮かべた
「伊澄さんから俺にキスして」
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