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ひねくれ者の、
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通話終了ボタンを押してしばらくスマホを耳にあてたまま動けずにいた。
『伊澄さん好きだよ。会いたいよ』
甘すぎるその響きがまだ耳に残って離れない。
そもそも"あいたい"なんて送るつもり無かったんだ。
最近ずっと鳴っていたスマホが今日は音沙汰なしだったからどうしたのか、と思ってベランダで煙草をふかしながらボーッと眺めていただけだった。
誤って送ってしまったメッセージにはすぐに既読がついた。
しまった、と思い直ぐに言い訳のメッセージを送るが既に送ってしまった文字は消せずやらかしてしまったことに焦るばかりだった。
「フー…」
短くなった煙草を最後にもう一口吸い込み揉み消して部屋の中へ入る
…汚くは、ない。
いまさら掃除しても仕方ないけど、少しはと思い身なりを整える
約束は俺の家の最寄り駅
俺のバイト先に何故か居座ってた金井は直ぐにこちらに向かうと言う
金井が家に来ることは初めて、というか人を招くこと自体初めてだからなんだか緊張する。
テーブルの上に転がる鍵を手にして家を出る。
あいたい、金井にあいたい
メッセージのやりとりならば我慢出来る
けれど、声を聞いてしまえばダメだ
我慢なんて忘れて会いたくなる
夏休みに入って、二人でいれる時間が増えた
そりゃお互いに予定もあるからずっと一緒というのは無理だけど…
でも、二人でいると最近ダメだ
夏の暑さのせいか頭が馬鹿になっているのか
傍にいれば触れたくなる
手を伸ばしたくなる
馬鹿みたいに、金井に触れたくなるんだ
だから遊びに誘われてもメッセージを送られても少しだけ返事をするのを躊躇した
まるで自分が嫌悪した恋する乙女みたいな
そんな自分が嫌だったから
エントランスを出れば強い日差しに目眩がしそうだ
長袖のカーディガンを今すぐに脱いでしまいたくなるが腕まくりだけですます
あつい…
こんなに暑いのに急ぐように足早になるのは
早くあのアホに会いたいから
別に久しぶりに会うわけじゃない
つい五日前にも会った。
一緒に買い物に行ったりして、
五日、たった五日会わなかっただけでもうダメだ。
ハルと付き合ってた時はこんなこと無かったよな?
昔と違う自分に最近は戸惑うばかりだ
少しでも金井も同じ気持ちでいてくれるのかな…
ふと芽生えた考えに舌打ちをする
女々しい考えを嫌悪するくせに、すぐそういう考えを持つ
はあ、とため息をつけばすぐそこに見慣れた駅が見える
もう着いたのか
金井が着くのにはまだ時間かかるか、
スマホのロックを解除してメッセージを送る
「(つ、い、た、に、し、ぐ、ち……っと)」
また直ぐに既読が着いた。
ふざけた犬のハートが飛び交うスタンプが送られてきて思わず口元が緩む
なんか、金井に似てる…
と、
「伊澄」
「あ?」
「はは、いつからそんなガラ悪くなったんだよ」
声をかけられて見ればそこには
ハルがいた。
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