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「ヤダ!!」
「拒否早ッ!!」
我妻は涙目で、後輩の胸ぐらを掴んで訴える。
「おちあいの家に気のきいたさけなんて、そうゴロゴロねぇじゃん!!ヤダ!!俺は今日もぉ吐くまで飲むの!!飲むって決めたんだよぉぉぉ!!」
(マジ腹立つこのクソ上司ィィィッ!!)
青筋をたてて怒りながらも、落合は冷静に対処する。
「わかりました!!…なら、俺の家にある酒という酒、全部封切りましょう!!先輩が望むもの全て、うちから提供させて頂きます!!」
我妻はぶくぅっとふてぶてしく両頬を膨らませ、俯くこと三秒。
「…ほんとにぜんぶ、あけてくれる??」
何故酔っ払いは全て片仮名表記で話し出すのだろう、と考えながら落合は答える。
「はい。」
我妻の視線は、段々と後輩の掲げる焼酎のグラスに移っている。
「…おれンこと、いぃっぱい、いえでせんぱいってよんでくれう??」
「あなたが仰せのままに。」
我妻はふらふらと両手を広げ、最後に懇願する。
「おちあい…。お前ン家に行くから、そのさけ、くれ。」
(どんだけ酒好きなんだ、この人…。)
落合は若干引きながら、先輩に酒のグラスを手渡す。
「いいですか、ごっくんごっくん…。ゆっくり、飲むんですよ。」
まるで、子供がモチを喉に詰まらせないよう大人がレクチャーしているみたいだ。
「ああ…。」
我妻の両頬はアルコールのせいか、ほんのりと赤く色づいている。元の肌が白いせいか、熟しだした瑞々しい桃のようだ。
元が最悪性悪鬼畜悪鬼上司だったから気づきもしなかったが、こうしてまじまじ見つめると、美人であるのが落合にはわかる。常日頃、理知的で近寄りがたい怜悧な瞳が、酒のせいかふんわりとろんとしていて…思わず現実が見えているか視力を確かめたくなる。
「おちあい…??」
噎せ返るような、桃独特の甘い匂いなんて欠片もしないのに、何故だか落合は彼の眼差しを受けて強く誘惑されている錯覚に陥った。
「…焼酎、飲んだぞ。お前ん家、行くんだろ??」
間近で片頬をペチペチと叩かれて、ようやく我に返る。距離の近さに一瞬息をのんだのは、ここだけの話だ。
帰りのタクシー。車内では、落合がぐったりしていた。
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