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本音ダダ漏れの落合に、トイレに駆け込んできた人物が手を差し出す。
「大丈夫ですか??…って、お前!!」
「あ、どうもどうも。って、…え??」
顔を上げた落合は、驚きに目を剥く。目前には、七三に黒髪を撫で付けた男がいた。がっしりとした強靭な両肩。利発そうな一重瞼。落合とどことなく雰囲気が似通っている。
「おお~、赤沢じゃん!!元気ぃ??」
「いやいや、元気も何もねぇよ。会社の取引先で、大学時代以来音沙汰なかった友人に会ったと思ったら、何で突然トイレの個室から飛び出てくんだよ、お前は…。」
どうやら、トイレに入ってきた人物は落合の学生時代の知人らしい。落合の友人…赤沢は、ろくに個室のトイレを調べずに、部下とその場を後にする…。
我妻は口を噤んだまま、個室の扉を閉める。続けて、扉を背にズルズルとその場に座り込んだ。
「…何なんだよ、全く。」
天井を仰いで、肩を落とす。…我妻の耳に、先ほどの部下の台詞が蘇ってくる。
『俺のこと、好きになってくれませんか??』
「…歯の浮くような台詞ばっか並べやがって。」
落ち着こうと便器に座りかけて、視界を掠めた、壁にかけられたトイレットペーパーに引っかかりを覚え、調べてみると…そこに紙はない。芯だけになっていた。
「…危ねぇな。」
替えのペーパーは辺りにないようで、上司はとりあえず芯を取り除いて捨てようと外に出ると、急いで帰ってきたらしい落合とばったり鉢合わせた。
「あっ、我妻さ…。」
部下が何事かを言うより早く。我妻はトイレットペーパーの芯を投球のかまえで勢いよく部下目掛けて放り込む。
「俺そっちのけで勝手に盛り上がってんじゃねぇぇぇ!!」
べこん、と芯は部下の頭部にクリーンヒットした。
「ええええっ!?」
動揺している落合のネクタイを引っ掴み、鬼上司は凄みのきいた声で命ずる。
「…昼休憩ン時、弁当寄越せ。」
「ほぁ??」
口を半開きにして馬鹿面を晒す部下に、我妻は去り際、肩をポンと軽く叩いてからぽつんと告げる。
「…会社じゃダメだけど。家に持って帰って、夕飯として食ってやるよ。」
感想には期待すんなよ、と部下に言いおいて我妻はトイレから出ていく。
落合はややして、トイレの出入り口を振り返って一言。
「あれは…ほだされて、いるのか??」
未だ、恋愛回答採点待ちの落合であった…。
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