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(落ち着け…。これは、清純なお付き合い!!恋愛を前提とした恋人未満上司部下以上のお付き合いです!!)
気を取り直して、落合は重ねた手に意識をやる。力任せに引っ張ろうものなら、どこかでポキンといってしまいそうな、細い腕。薄くて生白くて、触れているだけで絹のような滑らかな手触りのする、手。長く伸びた指は五本全てしなやかで、しゃんとしている。まるで、持ち主を表すようだ。
(…思えば、俺はこの手に色々と教わっていたのか。)
部下という関係と仕事上、何度も我妻の手との接触はあった。マウスを一緒に握った回数はそれこそ指折りあるのに、ただ手に触れているだけでこれほど思いが高ぶった記憶は…今日が初めてだ。
「…お前の手。」
ふっと、我妻が喋りだす。はだけた着衣姿の上司に対し、落合は目のやり場に困り果てた。
「分厚くって、あっちいよな…。腕は逞しくって、いい感じに筋肉質でがっちりしていて…。」
緩々と目を細めて、あの夜も、と我妻はか細い声で鳴く。
「…この腕に、身体を抱き竦められていたんだよな。」
二人で手を重ねた状態のまま、我妻はソファーの上で体育座りに体勢を変える。
「俺はさ、ゲイで女役だけど。当然の話、抱かれるのに全く抵抗がないわけじゃねぇんだよ。強引に襲われて、抱かれるってわかって。…すげー怖かったし、腹が立った。」
けど、と我妻は両膝の上に顔を置いて、恍惚の眼差しを部下と重ねた手に向ける。
「…この手は、最後まで俺に乱暴しなかった。」
ありがとう、と呟いた我妻の視線が年下の男に向けられる。
どう答えていいかわからずに、落合は微苦笑を口元に刻んだ。理性を飛ばして、男とはいえ我妻の身体を強引に暴いた罪は、きっとこの先二度と消えることはない。例え、互いに両思いなったとしても、結果がよかったからといって無事に解消されていいものではない。
責任を取る、と宣言した落合が楽になる日はきっと来ない。
(…それでもいい。)
落合は、年上の男の手を離さないよう握り直す。
(我妻さんがもう二度と、そんな恐ろしい思いをしないよう、努めるまでだ。)
…複雑に絡み合う二人の視線は、夜が更けるまで解かれることはなかった。
週が変わって、月曜日。晴れて、気難しい上司と思いが通じたと落合はすっきりした面持ちで出勤する。
(…ってか、あんな色っぽい我妻さん目撃しちゃったら、もォ~…。ぶっちゃけ、上司として見られなくないか…??)
我妻も我妻で、やりにくいのではないか。先週は公私混同をどっぷり濫用していた落合も、流石に認識を改める。
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