アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
42
-
「我妻さんの周囲、上下にいる男性陣もさぁ、鼻息荒く語るんだよ。なんかめっちゃ『綺麗になった』とか…。」
「う゛ん゛!?」
(大変だ。女性は大概我妻さんの感じ悪~い態度を眺めて、恋愛対象リストから外すが、男性とは大穴。しかも、我妻さん自身もゲイだし、もしかすると富のあるイケオジに迫られてグラッときちゃうことも今後の展開としてはおおいにあるのでは…!?)
一声唸ると頭を抱えだした落合に、水越は怪訝そうだ。
「お~い。どうした、落合。日々苦しめられている我妻さんの話を聞いて、新手の偏頭痛でもきたのか~??」
水越は相手の肩を掴み、ゆさゆさと僅かに揺らし出す。すると、落合が顔をあげ、同僚に訊ねる。
「…なぁ、水越。恋人※(仮)を一人の男に繋ぎ止めるためにはどうしたらいいんだろ…。」
「・ ・ ・。」
水越は文字にすれば『面倒くさい案件だな』という表情を浮かべて三秒後。おもむろに口を開く。
「…ベッドでメロメロにすりゃあ、いんじゃね??」
今日も出鱈目を並べる水越であった…。
我妻は淡々と仕事をこなすが、内心は穏やかではない。ポーカーフェイスでパソコンを操作してはいるが、画面に打ち込まれる言葉は『好き』だ。
(やばい…。金曜の夜からこっち、何事も手につかない上に進まない…!!)
鬼上司は困っている。が、彼の真顔は至って理性的で誰も我妻が浮かれているとわからない。
(ここまで仕事に苦しめられるなんて…畜生。落合の奴、どれだけ俺の足を引っ張れば気が済むんだ…。)
我妻は自分のカップを片手に、滅多に足を運ばない給湯室へと入る。…給湯室といっても、人間三人がようやく入れそうな通路でしかないが。入ってすぐ右手にポットとコーヒーの粉末や紅茶のティーバッグ、シンク等があり、左手には種類別のゴミ箱が並んでいる。突き当たりには、お菓子の置かれた高めのテーブルが鎮座している。
(甘めのコーヒーでも飲んで、気分転換しよう。カフェインをとったら、仕事がはかどるかもしれない。)
我妻がどのコーヒーにしようか迷っていると、視界に見慣れたカップが映る。シンク脇、水切りかごに伏せられている器が一つ。オレンジと黄の、独特な中間色のようなカップ。我妻は瞬きを繰り返す。
(これは…。)
単純な興味から、我妻はカップを手に取ってまじまじと眺める。
(…あのバカのカップだ。)
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
42 / 103