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(やばいやばいやばいやばい!!)
我妻は急いで、隠れ場所を探す。…奥のテーブル下が目につく。咄嗟に、テーブルの下に身体を滑り込ませる。
(な…っ、なんでこのオフィスだとけっこう偉い俺が、隠れる羽目になっているんだ…。)
複雑な心境の我妻だったが、隠れた以上、運を天に任せる他ない。
給湯室に入ってきた三人は、いずれも我妻の知っている女性社員達だった。
きゃあきゃあとお喋りしながら、目当ての飲み物を自分のカップに注いでいる。
「…でさ~、やっぱ織戸っちの彼、脈なさそう??」
背の高い影が喋る。…我妻は、声のトーンで彼女がオフィス端のデスクにいる南井だと気づいていた。
「ぎゃはは、みーちゃん辛辣ぅ~。」
笑い声が大きいややふっくらした体型の女性社員は、南井の向かいに座る浅上だろう。
「…みーちゃん、それがさぁ…聞いてよ。何か最近、私が好きな人、変なんだよぉ??なんか急に上司にべったりし始めたっていうかぁ~…。」
小柄な女性社員は…織戸に違いない。我妻は、僅かに俯いてしまう。
(このガールズトークはおっさんの俺…じゃない、織戸の上司である俺が聞いていいのか??)
ただ、このタイミングでテーブルの下からにょきっと生えてくるわけにもいかない。下手すりゃ三人の内の誰かがその場で失神しかねない。特に、織戸が卒倒しそうだ。
「え??何それ。ご機嫌取り??」
浅上は、きゃっきゃっとはやし立てる。
「…というか、織戸ンとこの上司って、あの男前の我妻さん??」
褒められた上に名前を呼ばれ、我妻は自分がテーブルの下にいるという事実を忘れて立ち上がりかける。が、続く織戸の台詞に、寸でのところで停止した。
「そうっ!!顔はまあまあだけど、短足短気男の我妻!!」
(たんそくたんきぃ…。)
我妻はへなへなとその場に屈み込んでしまう。…なんというか。男の悪口がストレートなら、女の罵りはカーブで、それぞれ目標人物の心を抉る。
「何かね、先々週の金曜くらいから、好きな人と我妻との距離が近すぎるっていうか。」
別に男だから良いんだよ、と織戸は口にしながら、ポットの頭を押す手には底知れぬ勢いがあった。ポットが低く唸っているにも関わらず、織戸は力の一切を抑えず、話を続ける。
「それまではね、目の敵って感じだったの。本当に。一緒にいても、お互い表面上のお付き合いって感じだったのに。ここ数週間で、親しくなったっていうか。…ちょっとムカつくくらい心通じ合っている雰囲気で。」
はっきり言ってウザい、と織戸は語る。…テーブル下の我妻は、すっかりしょげて中腰から体育座りにシフトした。上司の威厳なんか怒り狂う人間の前では皆無だ。…また、話の流れからすると、自分がここにいるのは大変マズい気がする。
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