アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
46
-
落合は、ゲイではない。まだ若い彼の身を案じるなら、自分と茨の道を進むより、織戸のように気立てのいい娘と一緒になった方が幸福に決まっている。
(…それでも、最後に決めるのは落合だし、俺は奴の傍にいたい。恋人でも…結局、上司のままだったとしても。)
どんな形になったとしても、やっと手の届く距離にきた温もりを我妻は手放せずにいた…。
カレンダーが、また一枚新たに捲られた。
火曜日。午後二時。落合は、鬼上司のいないデスクを遠巻きに眺めて長い溜息を漏らす。彼の横で、水越が指笛を吹いてみせる。
「はい、出た~。本日、午後に突入して二十一度目の溜息~。」
織戸も、落合に声をかけてくる。
「ねぇ~。落合君ったら、本当に大丈夫なの??午後からずっと、顔色が悪いんだけど。」
当たり前だ~、と落合は内心零している。
(好きな人の働いている姿が眺められない職場なんて…ぶっちゃけ放棄したいっ!!)
否、単なる我儘なので落合は働く。が、効率が悪いのは止む終えまい。
のろのろと動いている同僚を見かねてか。水越が冷やかす。
「そんな調子悪いなら、いっそのこと半休とるか??我妻さんみたいに。」
水越の言葉通り、落合の思い人は本日半休をとって正午前には荷物をまとめ、さっさと帰ってしまった。
「…でも、仕事一筋っぽい我妻さんが、事前に半休とってまで、何するんだろ??」
織戸の呟きに、忠犬はがくがくと鼻息荒く頷きを繰り返す。すると、大穴の水越が答える。
「あ~…。なんか、友達に会いにいくみたい。××町の喫茶店で落ち合うって言っていたよ。」
「!!」
考えるより早く落合は椅子から立ち上がり、隣席に迫る。
「み~ず~こ~しぃぃぃ~っ!!お前、なんでそんなこと知ってんだよ!?」
胸ぐらに掴みかからんばかりの落合の気迫に、精一杯顔を背けながらぼそぼそと水越は答える。
「おッ、俺はそれ以上についちゃ何も知らないよ。ちょうどお前が席から離れている時に、我妻さんがそこら辺をウロチョロしていたんだよ。んで、顔に『落合どこだ』って書いていたから伝言くらいならあずかろうと思って、声かけたんだよ!!」
そしたら、と水越は口をへの字に曲げて続ける。
「我妻さん『友達との待ち合わせで、××町の喫茶店を指定されたんだけど、周辺がよくわからないから落合に聞こうと思った』って。××町は、俺よく行くし。ちょっとではあるけど、土地勘あるから、我妻さんに駅から店までの道のりを書いた地図を渡したんだよ。それだけだっ!!」
水越の必死さに嘘偽りはないと判断して、忠犬はすごすごとデスクに戻る。
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
46 / 103