アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
49
-
「俺にとって、喜ばしくない方向に話を進められているんだが??」
苦渋の滲む我妻の表情に同期は早口を再開する。
「なにを言っているんだ!!君、わかっているのか。ノンケだぞ??元々ゲイだった僕と長続きしなかった君が、立派に相手できるとは思えないよ??」
伊月に痛いところを指摘され、同期はうっと言葉に窮する。
「今なら、まだ傷は浅いんだ。ノンケなんかやめて、同じ世界が見えている相手と付き合うべきだ。」
「例えば??」
我妻の縋るような目に、同期はちょっとだけ…鼻の下を伸ばす。
「例えば、僕とか!!」
「却下。」
伊月の語尾、エクスクラメーションマークと同期の返事が一致するくらい早く、年上の男は即答していた。伊月はがっくりと肩を落とし、ぶるぶると震えだす。
「僕は…僕はさ、京司。京司にフラレたのだって、まだ納得してないんだからね…!!」
くわっと、伊月は顔を上げる。
「いつか…いつしか再び、京司が僕に振り向いてくれる日を待っている!!」
「一生来ないっつの!!」
一声叫んで、我妻は卓上に相談料兼パフェ奢り賃の千円を置くと、颯爽と席を立って出ていく。伊月はテーブルに突っ伏して、長い息をつく。
「…どうして。何故なんだよ、京司…。」
伊月は整った顔立ちを曇らせて、掠れた声をあげる。
「…そんな、お前が傷つくだけの恋なんて、続ける意味ねぇよ。…目ェ覚ませよ、京司。」
水曜。デスクに着いた落合は、カッと目を見開いて、上司の席に目を向ける。…が、そこは無人だ。うう~、と涙をのむ落合に遠方から水越が声をかける。
「お~い。落合、忘れ物は見つかったか~??」
「えっ??あっ…、ううんと。…見つかった。」
水越は、静かに眉を顰める。
「何だよ、その曖昧な返事は…。大体、俺はな??朝一から日帰りの出張なんだから社内に忘れ物はやめろって、再三お前に言ったじゃねぇか!!」
「いや~。本当ごめんなぁ、水越。」
手を合わせながら、落合は心の中で水越にひたすら謝る。
(すまん、水越!!実は忘れ物っていうのは真っ赤な嘘で、本当は朝一でも万が一に我妻さんに会えるかもって理由だけで来ました!!)
当の我妻は、まだ出勤していない。…勢いだけではどうにもならない、と落合はかっくりと俯く。
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
49 / 103