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「…忘れ物を回収したんなら、とっとと行くぞ!!」
「水越、お前は時間や誤字脱字だけは偉くストイックだよなぁ…。」
落合はえぐえぐと号泣したいのを堪え、オフィスに背を向けた…。
数時間後。昼前のオフィスは、賑やかさがピークに達しようとしていた。
そんな中、織戸は携帯片手にニヤニヤと笑っていた。
(…何故なら、今日は落合君と水越君が日帰り出張…ってか出先からそのまま直帰しちゃう日!!)
本来、落合に会えない日だと織戸は悲しみに暮れる…が、しかし。文明の利器が恋する女を助けてくれる。
(SNSの”レイン”、つい最近落合君も始めたみたいだから出張中の空き時間に短文会話が楽しめる!!)
常に織戸は、落合と喋る時を待っている。待っている、というのに、だ。
(会社にいる時、落合君は五行に一度のペースで我妻の名前を出すぅぅぅ!!)
織戸は理解している。落合は、頼れる上司にゾッコンなのだ。幾らにっくき敵だったとしても、落合の仕事熱心な態度を否定するわけにはいかない。常日頃から、織戸は彼の上司話に付き合っている。
(…でも、今日の落合君は外出先!!)
織戸はグッと片拳を握り締め、天を仰ぐ。
(我妻のいないところなら、メロメロになっている落合君だって話題に出す回数は減るはず!!…しかも数日前から、私はお土産頂戴アピールしてきた!!)
ふっふっふっ…。織戸は口角を引き上げる。
(今の私は無敵よ!!さぁ、落合君!!我妻なんて気にせず、イチャイチャしよ~ねっ!!)
昼休憩になり、織戸はようやく悟った。
(…落合君にレインの文章を送ったけど、返信ない…。)
最近使いだした落合は、どうやら通知に気がついていないらしい。
(水越君は、どんどん余計な風景写真(無人)ばっか送りつけてくるし!!絶対面白半分でやっている、これぇぇぇ~!!)
織戸が歯痒さに肩を揺らしていると、付近にふらりと現れた我妻が不機嫌そうな声をあげる。
「おいっ、落合!!両替しろ。缶コーヒー買うための百円がねぇんだ、お前の財布…っ!!」
皆まで言い終わらず、我妻は部下の空席を認め、急いで自分のデスクへと帰っていく…。
(・ ・ ・。)
織戸は無言で、携帯画面に目を戻す。
数分後。織戸の背後にある通路を、鬼上司が歩いていく。手にしたクリアファイルを眺め、ぶつぶつと唱えながら足を運んでいるところをみると、どうやらまだ仕事中のようだ。
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