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織戸は我妻の姿を見て、先程彼が口にした『缶コーヒー』という単語が気にかかる。
(…私も自販機のところに行って、乳製品の甘い奴を買ってこよ。)
さっそく織戸は我妻の後ろにつくが、熱中しているのか。我妻はなかなか早く歩いてくれない。
(んもぉ~…。まだあたしだけだからいいけど、このままじゃ道が詰まっちゃうよ。)
忠告のためにと、ポンポンと肩を叩く。すると、我妻が口を開く。
「…うるさい、落合。今、俺はこっちに集中しているんだよ。」
「・ ・ ・。」
三秒後。織戸の石化は解けた。自由になった片腕で、やや強めに上司の背中を叩く。
「我妻さん、ど~ん☆…なんちゃって。」
(我、気ィ~づいてないッスよぉ~??先生を『お母さん』って呼んだのと親近感ある間違い、上司がしたなんて欠片も認識してないッスよぉ~??)
えへへ、とお茶目に笑いかける織戸に振り向いた我妻の顔は…首筋まで真っ赤に染まっていた。
「…すまん。その、悪ィ。」
(あ゛あ゛あ゛あ゛~っ!!コイツ、ことごとく私のお膳立てを無に帰すのが大好きだな!!ああ、もう!!あ゛あ゛あ゛あ゛~っ!!)
「えっとぉ…。おっ先ぃっ!!」
織戸はくるくる回りながら、我妻の前に割り込んで去っていく。…最後まで笑顔を絶やさずにいた自分は本当に偉いと織戸は自分に拍手を送った。
織戸は自販機で目当ての缶を買い、デスクに戻ってくる。…が、彼女の悲しみは深い。
(何なのよ、もう~っ!!せっかくの落合君と急接近する日、のはずが、どうして私が鬼上司の部下惚気を鑑賞する側になっているのぉ~??)
しゅんとする織戸の手元で、携帯が小さく鳴る。
「もう…。こんな時に一体何…。」
織戸が携帯を操作すると、”レイン”が更新されていた。落合が返事を打っている。
”織戸のお土産、買ったよ~。いつもありがとう。感謝の証な!!”
織戸は携帯を胸にあて、ゆっくりと目を閉じた。
(落合君、私はやっぱり君が好きだぁぁぁっ!!)
社内で叫び出しそうになる織戸だった…。
出張の合間。落合は、人通りの多い路地で立ち止まる。携帯を耳に当て、水越と連絡を取り合っている。
「ええ~…。ホテルに忘れ物、って…。まあ、会場入りには余裕あるからいいけど。」
『今朝、お前に散々注意しといて本当に申し訳ない…。』
通常より幾らかトーンダウンした水越の声に、落合はやれやれと息をつく。
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