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「忘れ物一回ずつで、おあいこだな。…でも、一人で会議の場所に行ってもなぁ。」
多少の用意はあるが、今回は複数の社との会議である。落合が自己紹介を終えた後に、水越が…という二度手間はあまり喜ばれないだろう。
『じゃあ、どっか近くで適当に時間潰しておいてくれよ。すぐ追いつくから。』
「えっ。適当にって…。」
落合が追求しようとした頃には、通話は切れている。あ~あ、とげんなりしてから、落合は周囲を見渡す。
「時間を潰せるところっつったって…。あ。」
落合の目にちょうど止まったのは、一軒の本屋だった。小ぢんまりしてはいるものの、客入りはまあまあだ。
(仕事をしているとなかなか目にしないけど、たまには本でも手にしてみるか。)
店内に入り、積まれている話題の文庫などを見て回る。不意に、医学書の棚が落合の目に入る。目を引くのは、平積みされている『ききたい!!知りたい!!見ちゃいたい!?大人の漢の保健体育!!』という手乗りサイズの本だった。
(男の…保健体育…。)
ハッと落合は姿勢を正す。脳裏で蘇ってきたのは、我妻を独占するために訊いた水越の答えだった。
『…ベッドでメロメロにすりゃあ、いんじゃね??』
「い、いやいやいやいや…。」
小声で唱えながら、落合は緩々と頭を左右に振る。少し俯いて、ギュッと目を閉じる。
(そもそも、我妻さんとのきっかけが無理矢理強引に身体を開かせちゃったからで!!それこそ、俺が反省しなきゃいけない点で!!次こそは、我妻さんの恋人に俺はなりたいわけで!!)
そこで、落合は考え直す。
(…いや、待て。考え直せ、俺!!我妻さんは元々ゲイで、男同士のやり方にも俺より断然詳しいはず。…ところで俺は??我妻さんが女役なら、つまり男役は俺!!我妻さんと一つになる時、あの人の心身を紳士的に導いていくのは、O・RE!!)
知らぬ間に、心拍数と呼吸が荒くなるノンケ部下であった。一呼吸おいて、目をカッと見開く。
「…知っておく必要アリアリだろ。」
医学書の本棚に手を伸ばしかけ…慌てて引っ込める。
(だ、ダメだダメだ!!今、ここ出張先!!…仕事を疎かにする奴は、我妻さんの敵じゃん!!俺、今まで何年あの人の傍についてきたと思ってんだ!!…というか、水越がこっち向かっているし!!上司や同期に、俺はなんて醜態を晒すところだったんだ…。)
急いで他の手頃な本を探そうと、駆け足になった落合は売り場ギリギリに並べられていた本の列に足が掠めて、何冊かを床に落としてしまう。
(あああ~…っ!!)
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