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なぁ、と落合は掠れた声で年上の男に訴える。
「アンタは…アンタは俺を見て、息を忘れることはないの。言葉に表せなくなるぐらい、心がいっぱいになることはないの。ちりちりと心を端から炎で炙られるような焦燥感に駆られた覚えはないの。」
一人じゃ嫌なんだ、寂しいのは今まで平気だったはずなのに、と落合は顔をくしゃくしゃにして声を絞り出す。
「俺ばっかり、アンタへの思いに溺れている。惨めに、水上にやっと顔を出してあっぷあっぷ、途切れ途切れに浅い呼吸を繰り返している。」
落合は深く俯いて、手に握り直した携帯に語りかける。
「…俺じゃ、アンタはもったいない存在なのかなぁ。」
『…。』
携帯はしばらく黙っていたが、やがてぽつぽつと話し出す。
『なんて答えていいのか、わからない。なんて励ましていいのかも…。俺はずっと、泣いている人を慰めるのがド下手なんだ。きっと、自分でも笑っちゃうくらいに。』
でも、とノイズ混じりの声は力強く続けた。
『お前にずっと打ち明けたい言葉があった。…聞かせるとしたら、今だと思う。』
我妻の浅い呼吸が漏れ聞こえてきたかと思うと、すぐにはっきりとした声で断言する。
『あのさぁ、落合。俺は…さ、ちゃんとお前が好きだよ??』
「…!!」
落合の手から、携帯が滑り落ちる。ベランダに転がった携帯を、落合が急いで拾いなおす頃には通話は切れていた。落合はその後しばらく、呆然と屈み込んだ体勢で、ツーツーという無機質な音色を繰り返す携帯電話を眺めていた。
金曜日。昼休憩終わり五分前。落合は耳に携帯をあてたまま、仏頂面を浮かべている。
隣席の水越が、茶化すように硬直している落合の片頬を人差し指の先で突く。
「あはは。何面白い顔してんだよ、落合~。さては鬼上司からダメだしが来たなぁ~??」
海辺で追いかけっこしているカップル男か、と突っ込みたくなる満面の笑みに、落合は冷ややかな目を向ける。
「…逆だ。」
「え゛。」
今季☆初!!水越の顔が急速に強ばっていく。落合は、深々と頭を抱く。
「逆なんだよ!!我妻さんから全く連絡が来ない!!俺は…俺は飽きられたんだろうか!?捨てられてしまうんだろうか!!」
「お、落ち着け、落合!!連絡(という名のおしかりの言葉)がかけられなくなったお前は…お前は(虐げられる玩具として)飽きられたんだよ!!良かったじゃん!!お前は、(虐げられる玩具として)やっと我妻さんに捨てられたんだ!!おめでとう!!」
「ふざけるな、水越!!」
机を叩いて睨みつけてくる落合に、水越は素っ頓狂な声をあげた。
「真剣に祝っているんだけどぉぉぉ…??」
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