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がっくりとしている落合に、背後から織戸が軽く肩を叩いてくれる。
「…落合君。」
織戸は小さな肩を揺らし、嗚咽を殺すように下唇を前歯できつく噛む。
「我妻さんったら、信じられない…っ。」
(むしろ、俺は俺自身を信じられない…。)
感情に任せて猛り吠えた過去の自分を、落合ははっ倒したいくらい憎んだ。
「落合君をこんなコテンパンにしてっ!!私、一生許さない!!」
「待って、織戸。むしろ、コテンパンにしたのは俺だし。許されそうにないのも、俺だよ…??」
落合は小首を傾げる。場の勢いにやられているのか。織戸は、落合の片腕を両手で包み、断言する。
「大丈夫よ、落合君。私は、私は全部わかっているからね。」
(よくわかんないけど、なんかこの子、見事に物事を誤解しているわ…。)
くすん、と鼻をすすりあげる妹のような存在の織戸に落合は速やかに口を閉ざす他ない…。
会話が噛み合わないまま、時間は過ぎ、落合は同期二人に引きづられるように定時に帰宅した。本当なら、定時後に書類を届けに職場を訪れるはずの我妻に会いたかったが、何故か同期の『KA・E・RE!!』圧が強く、帰宅するしかなかった…。
家に帰って、風呂を掃除する。夕食をとる。食後に皿洗いをする。風呂の用意をする。だが、何をやっても落合は時計が気になる。無自覚に、午後八時まで残り何分かを数えてしまう。
午後八時ちょうど。チャイムが鳴る。落合はみっともなく息を切らして、扉の前まで走った。見慣れた扉が、今では別世界へと通じる魔法の門のようだ。震える手で、ドアノブを握る。
小さく開いた先には、いつものスーツ姿の上司が所在なさげに佇んでいた。不機嫌そうな瞳が、白いTシャツに黒いジーンズという格好の落合を捉える。
「…これ。」
我妻がつっけんどんに両手で差し出したのは、小さめの白い紙袋だった。落合が受け取って中身を覗くと、有名な土産メーカーの包装がされた四角い小箱が一つ、紙袋の底に沈んでいる。
「もしかして…わざわざ俺に土産を買ってくれたんですか??」
面と向かって事実確認されるとは思ってもいなかったのか。我妻の顔が一気に赤くなる。
「わっ、わざわざって…。これはアレだ、ええっと…。お、お前には日々世話になっているし、このくらい社会人の努めとして当然のことをしたまでで、俺は別にそのだな…っ!!」
もごもごと言い訳を並べ立てだす上司に、落合はふっと口元を緩めた。
「ありがとうございます。…俺、我妻さんから個人的に何か貰うの、初めてですよね。」
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