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紙袋を胸の前で抱きしめて、鼻息荒く部下は続ける。
「一生の思い出にします。」
「な…っ。オーバーな…。」
半眼になる我妻に、年下の部下は手足をバタつかせて『オーバーじゃないです!!』と唇を尖らせる。
「先輩から、初めて貰ったプレゼントですよ??大切にするに決まっています!!」
「言っとくけど中身、饅頭だかんな、ソレ…。賞味期限内には食えよ??」
我妻はふっと微笑むと、小さなくしゃみを一つする。落合は急いで、扉を大きく開け放つ。
「…せ、先輩。こっち…。」
スーツのジャケット裾を引っ張って、室内に招き入れる。我妻は躊躇う風もなく、簡単に年下の男の家に上がった。
我妻の背後から何やらガラゴロと派手な音がする。落合が怪訝に思って、照明の下で音の発信源を見据えると、正体はキャリーケースだった。どうやら我妻は、出張から会社まで帰ってきて続けて、部下の家に足を運んだらしい。
「すいません、ずっと外で待たせちゃって。寒いよな。…部屋温めているんで、案内します。」
「落合…。」
譫言のようにふわふわした声で名前を呼ばれて、上司の前方、廊下の途中まで歩みを進めていた落合はふと足を止めて、相手を振り返る。
「せんぱ…っ!!」
刹那。我妻が年下の男の身体を背後から、ぐっと抱きしめる。
「…せんぱ、い??」
何が起こっているのか。一瞬、落合にはまるで状況が理解できなかった。
我妻は年下の男の厚い胸板に顔を埋めるようにして、抱きついていた。そのままの姿勢で、くぐもった声を出す。
「落合。お願い。…ここで、今すぐ俺を抱いて。」
「…っ」
落合の目が、限界まで大きく見開かれる。
「俺を、お前のもんにして…っ」
年下の男の背に回した手で、落合は服の布地をぎゅっと握り締める。…我妻の脳裏に響くのは、連日聞こえてきた声だった。
『今なら、まだ傷は浅いんだ。ノンケなんかやめて、同じ世界が見えている相手と付き合うべきだ。』
『何かね、先々週の金曜くらいから、好きな人と我妻との距離が近すぎるっていうか。』
『…俺じゃ、アンタはもったいない存在なのかなぁ。』
自分達の恋には、障害が多すぎる。ここ数日で、我妻は嫌というほど思い知った。男同士な上に、事故のように一度身体の関係を持ってしまった。
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