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落合は、腕の中で小さく肩を揺らして泣きじゃくる、年上の男を見下ろして静かに目を伏せる。
(俺は、本当にこの人を大切にしたいから。)
誰にも渡したくないのと同じくらい、二度と理性のぶっ飛んだ自分にだって彼の肉体に触れて欲しくない。…微妙な男心なのだ。
落合は緩々と身体を屈め、年上の男の、縁まで真っ赤に彩られた耳に低く囁きかける。
「…先輩、俺が迎えに行くまでちょっと待っていてくれませんか??今すぐには出来ないけど、長くは待たせません。」
我妻の顔は見えない。だが、年下の男には手に取るようにわかる。間違いなく、赤面して目のやり場に困り果てているのだ。
「先輩のところまできちんと迎えに行けたら、その時は…アンタは俺に大人しく抱かれて下さい。」
落合の無骨な指先が、年上の男の、視界を塞ぐ邪魔な横髪を一房掬い上げる。髪を我妻の耳にかけると、相手はピクリと小さく両肩を戦慄かせた。
「…はい。」
本心からの返答に、落合は小さく微笑んで、相手のコメカミに唇を寄せる。化粧でもしているのかと勘繰るほど真っ赤になった我妻の瞳から、大粒の涙が溢れ出す。
「おちあい…っ!!」
舌っ足らずに名前を呼んで、鬼上司は思いっきり落合を抱擁する。勢いに半ば押し負かされつつ、落合は口元に微苦笑を刻む。
「はやく…はやく、迎えに来いっ!!」
わんわんと泣きじゃくる年上の男の後頭部に手を添えて、落合ははい、と頷いた…。
金曜の晩は、温かいミルクにハチミツを溶かした味がしそうだった。
深夜の、バラエティーをソファーに座って二人で眺めた。二人の距離は十センチほど。中間には、互いに重ね合った手があった。
ハグは小っ恥ずかしいと我妻が言い張るから、代わりにベッドで添い寝した。ダブルベッドでも成人男性二人には少し窮屈なものがある。寝る前に、今度キングベッドを見に行こうと我妻に相談を取り付けた。
横向きに寝た。二人で向かい合って、見つめ合うとたちまち我妻が真っ赤になった。からかうと、今度は怒気でますます赤くなる。頭を撫でたら、途端に口数が減っていき、ずもももも…と布団の海に沈みかける。慌てて、落合は相手の両脇を引っ掴んで枕の岸へとすくい上げた。
それまで、落合が夜な夜なお勉強した大人な保健体育の知識は一晩中彼方に忘れ去られたし、年上の男の蓄積していた焦りや杞憂も脇に片付けられた。
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