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「かわいい、ついでに!!…赤沢と何を話したんですか!?」
妙な雰囲気になっているテーブル席の横を、男性社員四人組が『喧嘩じゃね~??』といい加減な見当をつけて通り過ぎていく…。足音が遠ざかった頃、突然、上司が落合を睨みつける。
「い…、言わない。」
落合は目を鋭くして、普段は滅多にない穏やかな表情を崩して、年上の男に迫る。
「…今、ここで。強引に言わせたっていいんですよ…??」
年下の男の親指が、我妻の下唇をゆっくりとなぞる。我妻の喉仏が期待するように上下に動く。反面、我妻の双眸は怯えの色を深くした。
「い、いやだ…っ!!今まで、お前とチューしたことないのに…こんな、人が大勢いる中で…っ!!そっ、そんな強引にしたって、俺は話の内容なんか絶対にお前に言わない、から…!!」
啜り泣くような声に、落合の嗜虐心が酷く刺激される。…思い起こすのは、この傲慢な上司と関係が始まった浴室での場面。
(あの時もこうやって、俺が一方的に我妻さんを…。)
過ちの一夜は、落合のテリトリーでひっそりと行われた。しかし、ここは会社の食堂。落合は酩酊感に溺れる。衆人環視の状況で、ワガママ放題の年上男を一方的に攻めて立てる…。落合だって男だ。無欲ではない。
(冗談じゃねぇ状況だけど、止まりたくねぇな…っ)
くっ、と右の口角を引き上げた、矢先。
「あっれ??落合じゃん。」
(ビックゥゥゥッ!!)
驚きすぎて、心の声にまで身体の反応が出た落合は、バクバクなる心臓に手を当て、振り返る。そこには、実家の居間かと突っ込みたくなるくらい馴染んだ水越の顔があった。
「…お前、”購買弁当派”じゃねぇのかよ。なんで、今日は社食にいるんだ??」
水越の指摘に、落合はとりあえずニコッと微笑む。
「…ええっと。我妻さんに書類を確認してもらおうと思って。」
ねぇ、と部下が微笑みかけると年上の男は俯いて…手で頻りに自らの唇を擦りながらああ、とくぐもった返事をする。髪の合間から覗く耳が、真っ赤に染まっている。
(う~ん…。やっぱ、カワイイ。)
生殺しか、と密かに悶えつつ、落合は食堂の椅子から立ち上がる。傍で見ている水越に勘ぐられないよう、細心の注意を払って…年上の思い人に伝える。
「じゃあ、我妻さん。この件は保留ってことで。」
「…。」
我妻は無言でやりたい放題の部下を凝視する。不満げな、だが恥ずかしげでもある眼差しに落合は口中の唾液を飲み下す。
「じゃっ、俺はオフィスに戻っておくわ。」
「あ、ああ…。」
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