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「…はァ!?」
耳元で発せられた大音量に、落合は一瞬ついていけなかった。わんわんする耳元で、年上の男が捲し立てる。
「ちょ…っ、ちょっと待て!!何を誤解しているのかは知らないが、俺は全く身に覚えがないからな!!き、キスって何だ!?例え一億歩譲ったって、俺はキスなんか他の誰ともしてねぇよ!!」
「いやっ、でも現に赤沢が去り際に『ご馳走様』って…!!」
バッカ野郎!!、と我妻は今季一番憎悪がこもった叫びを口にする。
「食堂で居合わせたから、俺が話を聞くついでに親子丼一杯を奢ってやったんだ!!他に『ご馳走様』の用途で、これ以上正しいもんがあるか!?」
「え…。なら、全部、俺の勘違い??」
勘違いに決まっているだろ、と我妻は容赦なく罵る。
「大体、俺はお前以外の奴とキスやその先だって、幾ら金積まれたって嫌だねっ!!」
断言して一秒、二秒…。ちょうど十秒を落合が数え終わったところで、赤面した年上の男がぷるぷると震えだす。
「ちが…っ、今のはその、言葉のアヤっていうか!!」
「我妻先輩、その発言は俺を求めているって期待していいんですか??」
「だ、ダメだって!!お、俺は別にそんな…調子乗んな!!このバカ!!」
真っ赤な顔を両手で必死になって覆い隠す年上の男に、落合の鼓動は高鳴っていく。
「あああ、もぅ…。」
どんどんと丸くなっていく我妻に、部下は柔らかく相手の頭を撫でつけながら訊いてみる。
「…先輩、そろそろいいでしょう??赤沢と何の話をしましたか??俺とは無関係な話ですか??」
「ちげぇよ。」
口を尖らせた上司は、ぼそぼそと真実を話し出す。
「お前の、過去に好きになった人がどんな奴らか気になって…。赤沢に探りいれたんだよ。その…勝手にごめん。」
「我妻先輩…!!」
明日は槍でも降るのか、とあっさり頭を下げて謝った我妻に部下は感心する。が、次の瞬間、顔を上げた我妻は般若と化す。
「…でもお前、大学時代は随分とヤンチャしていたそうじゃないか。え゛え゛??」
落合はサッと顔をそらすが、事実は鬼の面で間近に迫ってくる。
「無垢な女子に迫られて、交際していたそうじゃないか。へぇ~へぇ~。引くてあまた。よりどりみどり。」
虚ろな目をする年上の男に、落合は迅速に繕い出す。
「そっ、そりゃあ学生時代だし、多少は若気の至りで、冒険しちゃったかもしれないですけど…。」
落合は、年上の男を抱く両腕にぐっと力を込める。
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