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再び溜息をついて、織戸は俯きがちになる。
「つけいる隙もない感じだし、これは失恋決定でしょうなぁ…。」
続けて天井を仰ぎ、織戸は低く唸り出す。
「…っでも、やっぱ何か納得いかない!!」
織戸は、くるっと水越の方を向く。
「水越君ッ!!今日は私の失恋記念として飲もう!!居酒屋をハシゴしてハッチャケようぜ!!」
両拳を楽しげに上下に振る織戸の前で、水越は鳴り出した携帯をとる。
「…羅壱(ライツ)??」
名前を呼んだ瞬間、水越の雰囲気が一変する。舌打ちを一つして、水越は喋りだす。
「亜佐目高の奴、また吹っかけてきやがってのか。懲りねぇな。あん??山科の野郎が誘拐されただと??バッカ、てめぇ何やってんだよ。」
聞こえてくる話の内容についていけず、瞬きを繰り返す織戸そっちのけで水越は相手に語る。
「…わかった。今から仕事切り上げて、お前ンとこ行くわ。山科の野郎??っは、アイツがそう簡単にくたばってたまるかってんだ。警察に匿名で連絡いれて、そっちに気をとらせるって手もアリだな。…ああ、匿名電話は俺がやる。警察相手だ。せいぜい、アシつかねぇようにやらねぇとな。」
物騒な単語をチラつかせて通話を切ると、水越は軽い調子で織戸に手を合わせる。
「すまないな、織戸。急用が入った。居酒屋ハシゴは、また今度付き合うわ。…我妻さんは??」
「…か、帰ったよ。」
織戸は伝えると、水越が眉根を寄せる。
「え゛。我妻さんまで??」
「なんでだろ~ねぇ??」
織戸はわざとっぽく伸びをしつつ、投げやりに言う。
「…雨でびっしょびしょになった彼氏の介抱とかじゃなぁ~い??」
「嫌味ったらしい姑みたいだぞ、お前…。」
水越は、鬱陶しげにガリガリと後頭部を掻き毟って…不意に手を止める。
「ああ、そういや言おうと思っていたんだけど。」
水越は続けてデスクの上を綺麗にしながら、織戸に告げる。
「タオルを持っていけ、って俺に言ったのは我妻さんだからな。」
「…え。」
目が点状態の織戸に、水越は丁寧に説明してやる。
「言われたんだよ。『女性のスーツは濡れると透けやすい、本人が恥ずかしいから』って。」
織戸はむぅっと下唇を突き出して、盛大に拗ねてみせる。
「…なに、アイツ!!本当にいけ好かない奴だわ~。私の落合君を奪った上に、気障なことしてくれちゃってさぁ~!?」
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