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◇23
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「待たせてごめんね。
誠司はなんで外にいるの?」
声がいつもより素っ気なくなってしまったが、仕方ないと思う。
「そんなの隆二に早く会いたかったからだよ」
とにこやかに告げる。
(よくもそんな思ってもないことを言えるな)
逆に感心してしまう。
「ふーん。なんでもいいけど。
早く部屋入ろ」
玄関の前にいる誠司を無視し、中に入る。
玄関のドアが閉まると同時に、後ろから抱きしめられた。
「なんで今日の隆二そんなにイライラしてるの?
俺に会えて嬉しくないの?」
頬に口付けながら、誠司が言う。
お風呂上がりの香りが僕を包む。
階段ですれ違った女と同じ匂いがした。
「別にイライラしてないよ」
その匂いが、また僕の傷を抉る。
「嘘。俺に嘘ついてもいいと思ってる?」
「本当にイライラしてない。
大学の課題が大変で疲れてるだけ。
誠司が心配するような事でもないし」
「本当?」
僕の瞳を覗き込む。
誠司の瞳の奥に、僕の姿が写った。
今はそれだけでも幸せだ。
誠司が僕を見てくれている。
「本当」
誠司の瞳を見つめてこたえる。
近づいてくる唇に、そっと瞳を閉じる。
「好きだよ、隆二」
重なる唇に、呟く声。
(まるで麻薬みたいだ)
幾度となく告げられる告白に、僕は縋っている。
誠司がいない人生は考えられない。
家族がいない僕にとって、誠司が唯一だ。
それはきっと、誠司も同じ。
依存している事は気づいている。
この関係が無意味なことも。
それでも弱い僕は、1人になるのを嫌い、見て見ぬ振りを続ける。
「ねえ、ここに誰か来てた?」
「隆二が来るちょっと前に帰ったけど、サークルの後輩がちょっと来てたよ」
「そうなんだ。
何しに来たの?」
「忘れ物を取りに来ただけで、すぐに帰ったよ」
嘘で塗り固められた言葉。
平気で嘘をつく恋人を見つめる。
「そっか」
僕が何も言わなければ、誠司はここに居てくれる。
今日も明日も、僕は嘘を信じ続けていく。
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