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例に漏れず伊織達は体操が終わり、ぴっちりジャージを着た先生が授業の説明をしたあと、外をブラブラと目的なく歩いた。ほどよい部室棟の影に入ると、たわい無い話をして怠惰に時間を潰す。
「暑くて干からびそー」
紘太郎はひょろりとした腕で額の汗を拭った。男にしてはやけに細く血色も悪い。不健康そうで、肉付き貧しい体だ。そんな体で不特定多数と高い頻度、行為に及んでいるのだから本能とは末恐ろしいものである。
「干からびてもバイトは行けよ?」
「え、干からびても?」
言いながらスマホを操作する理玖に、紘太郎は窺うように上目遣いで聞く。体育の授業で携帯端末を持ってくるとは、はなからサボる気だったと物語っている。
理玖は祖母のチエコから送られてきたメールを読んでいた。つい先日に泊まった時、伊織も試行錯誤するチエコに教えたものだ。
何度も泊まりに来る伊織に、理玖の祖父母は優しく出迎えてくれる。健康的な薄味の手料理が美味しく、伊織はチエコの味噌汁が大のお気に入りだった。
「絶対に行け。それでも行けないなら、電話で休むって伝えろ」
「休みすぎて、そろそろクビ宣告が降りそう」
「クビになりたくないなら必ずバイトに行け」
呆れた様子で理玖はスマホから視線を外す。眉を下げて笑う紘太郎に、再度「行けよ」と強く言った。
「伊織、俺のバイト行かない?」
両手を顔の前で合わせた紘太郎が片目を瞑る。彼の得意な"お願い"のポーズである。事あるごとにやるものだから、その効力はもはや伊織に対して半減していた。これが紘太郎であれば、渋々であろうともまだ許されただろう。
「無理。まずバイト先が違うし、今日は俺もバイト」
伊織は表情を変えずに事実だけを述べた。
幼さを目立たせる容貌は、つまらそうで気怠げだ。建物に背を預け、校庭でサッカーをする同級生を眺めている。
「うえー、まじかぁ」
「たまには大人しく行っとくんだな」
「伊織と俺を見習って、真面目に働いてみれば?」
二方向から責められた紘太郎は、しおしおと項垂れる。
普段からバイトを休みがちな彼は、本当にクビ予備軍宣告をされたのだろう。甘えさせるのも面倒見がいいのも、度がすぎれば毒である。
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