アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
7
-
あの時のちさ兄の顔が今でも忘れられない。
だって、今迄で1番優しい顔をしてたから。
…なんで?
なんでこういう時に、誰でも包み込んでくれるような優しい顔をしてるの…?
これまでのちさ兄のことを思うと信じられなくて、これは夢なんじゃないかって錯覚だと思ってしまう。
でも次の言葉でこれは現実だと思い知らされる。
「なら死んでよ。」
その一言だった。
僕は少し期待してたのかもしれない。
死ぬって言ったら心配してくれるんじゃないかって夢見てた。
すごく惨めで仕方ない。
「その顔サイコー。
いいよ、教えてあげる。
僕ねー、今度結婚するんだ〜。
んで、夜の営みってあるでしょ?でも経験値積んどかないと相手も満足しないみたいなことをお父さんに言われたの。
僕って跡取りだから面倒ごとは避けたいじゃん。から風俗とかはなし。でもそんな時に南がいたんだよね。」
「そんな…」
言いたいことはある。
けど喉の奥に引っかかった感じで言葉が出ない。
「あとなんだっけ。
女として生きないといけない理由だっけ。
でももうここまで言ったら分かるだろうけど…」
…もういい
聞きたくない
ちゃんとした言葉で言われると現実だと受け入れなきゃいけない気がする
だからもう言わないで…
自分で聞いたくせにそんなことを思ってしまう。
なんて自分勝手なんだろう…
でも僕の気持ちを知ってか知らずかちさ兄は言葉を続けた。
「南は僕のお嫁さんの代わり。
なんの才能もない南にも役に立てることがあってよかったね。」
寂しい
すごく寂しい
すごく悲しい
すごく虚しい
ちさ兄は何かに気づいたようで僕に近づいてきた。
「?」
「泣かないでよ。そそられる。」
「あ…」
僕は何故か泣いていた。
泣いてるなんて全然気づかなかった…
でもその事実にまた悲しくなる。
ほんとに体は正直なんだって思い知らされる。
そして今度こそ話は終わったとちさ兄は部屋を出て行った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
31 / 94