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おいしいおもい
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カラン、とコップの中の氷が音を立てた。
さっきまではちょうど良い琥珀色をしていたウィスキーも、今ではすっかり薄くなってしまっていた。
「聞いてくれよ塚田くん…。」
「はいはい、なんですか藤田先生。」
藤田先生が俺に相談する時のお決まりのフレーズ。
このフレーズの時は決まっていつも──
「いやぁ、奥村先生のことなんだけどね?」
そう、恋愛相談と決まっているのだ。
「まぁた奥村先生の話ですか?」
「んー…、やっぱり塚田くんにしか相談できなくてさぁ。」
「まぁ別にいいっすけど…。で?今回はどんな相談なんですか?」
「なんか、奥村先生と距離を感じるんだよねぇ。」
…ちょっと何を言っているかわからない。
状況がわからない人のために説明するが、奥村先生というのは今俺に相談を持ちかけている藤田先生の恋人である。
ちなみにこの2人、めちゃくちゃ仲が良い。
どのくらい仲が良いかと言うと、2人で話している時はお互い生徒に向けるよりも穏やかで柔らかくて優しい顔をしているし、この前行った修学旅行でも偶然を装って隣に布団を敷いて寝ていたし、他の先生は気付いてないだろうが、職員室で藤田先生はたまに奥村先生の尻を揉んでいる。
距離感なんてあるはずもないし、壁なんて一瞬で崩れてしまうほどの仲の良さなのである。
それなのに、この藤田という男は何を言っているのだろうか。
「…そんな風には見えないっすけど。」
「いや、そりゃあ不特定多数の前ではね?気まずい空気出すほど俺も向こうも子供じゃないから。」
でもなぁ…、と藤田先生は頭を掻きながら話した。
「俺たちさぁ、こないだ初めてやることやっちゃったんだよね。」
「ぶっっっ!!!!」
あっっっっぶねーー!!!!
いや確かにこの人達いい大人だし、付き合ってて好きな人といたらそりゃあやることはやってるだろうけど!!
「先生!」
「ごめんごめん。君高校生みたいな反応するんだねぇ。」
「いいっすけど……、というか結構遅くないですか?お二人、付き合って結構経ってますよね?」
「俺も流石に一年も付き合っててそういうことが無いっていうのはちょっと寂しいなぁって思ってたんだけど、何せ奥村先生が恥ずかしがってさ。」
「あぁ、なるほど。」
「で、その初めての日から何となく距離を置かれてるっぽいのよ。二人っきりだっていうのに目も合わせてくんないし、どうしたのって聞いても慌ててはぐらかされるし。」
「おぉ…、それはまた結構クるものがありますね。」
「そうなんだよ…、あれかなぁ。初めて体見せたから幻滅しちゃったかなぁ。それともセックス下手だったのかなぁ俺。45年生きてて結構ショックなんだけど。」
「まぁ確かに、奥村先生は細身で筋肉ある感じっすけど、藤田先生はビール腹でまさに中年って感じですもんねえ。」
「人から言われると結構なショックだなぁ、それ。」
「でも多分、それが原因じゃないですよ。」
そう、俺もそれを経験したことがある。
俺も実は同じ職場に恋人がいるのだが、その、初めて致したあとから急に避けられて困ったことがある。
どうして避けるのかと小一時間ほど問いつめたら真っ赤な顔で「うるせぇ!」と横っ面を張られたのは苦い思い出だ。
「本人に直接理由聞いてみてくださいよ、多分大丈夫ですから。」
「うーん、もう一回やってみようかなぁ。まともに話してくれるといいけど。ごめんね塚田くん。長々と相談乗ってもらって。」
「いいっすよ。ここの飲み代8:2で割ってくれるなら。」
「ちゃっかりしてるなぁ、もう。」
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