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Episode 48
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「また来たのか、浅葱」
目を開けた場所は、口伝えることすら憚られる悍ましい血溜まりだった。
どう美化したって、あの日の桜には及びもつかない。
「もう、お別れだって言っただろ」
鴇は呆れたように息を吐く。
浅葱の眉がぴくりと動いた。
「兄さんは生きたがっているんでしょ?だから6年も生きられているんでしょ?」
膝まで血溜まりに埋まり、動くたびに不快な肉と液体を感じるが、どうでも良いことだった。
鴇までは3メートルほど。
「諦めて欲しい、俺はもう、疲れたんだ」
耳を疑った。
この6年、それだけのために身を削って生きてきたというのに。
必要なかったと、諦めて欲しいと言う。
諦められれば苦労などしていない。
終えられれば疲労しない。
「ボクはどうすれば良いの……?」
服の隅々まで血が染み渡る。
一歩を踏み出すのがやっとの浅葱とは違い、鴇は歩み進め、やがて見えなくなってしまった。
その場に崩れ折れる。
意志を育むことなどなかった。
だからこそ人の理由を自分に置き据えてこれまでを生きてきたのだ。
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