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Episode 63
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理解出来ないわけではない。
受け入れられないわけではない。
理解者が出来たことに歓喜しているのは確かだった。凡そ信頼に足る人物であることも。
柊は恐ろしかった。
自分が出した少しの我儘で、今まで必死に築き上げたものが一瞬にして壊れてしまうかもしれないことが。
浅葱に嫌われることが、恐ろしかった。
済し崩し的に想いを伝えた浅葱を毎日抱き、縋り付かれることに優越を感じている。
このまま、もしかしたら鴇を越えられるかもしれないと希望を抱かずにはいられない。
もう諦めてしまえ。
浅葱にずっと伝えたかった言葉が、降り積もって自分を苦しめる。
希望を捨てろと願われることは、きっと酷く辛いことなのだ。
浅葱に伝えようとしていたことが残酷であることを、自らに起こって漸く知る。
浅葱も柊も、己に空く穴を受容出来ない。
誰でも良い誰かに認められたいと言いつつも、特定の誰かしか見えていない。
愚かだ。滑稽の愚者だ。
誰かに、如月に、縋り付けるなら柊は楽だった。誰かに、柊に、代わりを求められるなら浅葱は楽だった。
足踏みをするように、何も進まないこの生活、人生に飽き飽きしていた。
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