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Episode 64
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浅葱を廊下で待ち始めてからもうすぐ1時間が経つ。不安定な浅葱が心配になり、病室の扉を開く。
夕日が差し込む橙色の病室。
その中に溶け込みそうな浅葱の顔、攫われそうに華奢な身体。
映る左手に右手を合わせ、浅葱は外を見ていた。美しいと思った。
「……あさ、ぎ……」
柊は手を伸ばす。夕日に連れて行かれてしまうと思った。
こんなに儚く涙を流す弟が傍にいるのに、頑なに目覚めようとしない鴇に歯噛みする。
8年前のあの日から、柊は、浅葱の笑顔を見ていない。
「…………」
振り向いた浅葱は涙で潤んだ瞳で柊を見る。
「ねえ、柊、」
ぽつぽつと、涙に濡れた声は話す。
もう、疲れてしまったんだ。
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