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あいつが特別だったとは思わない。
一目見たときに恋に落ちていたなんて後付けはいくらでもできる。
電撃結婚をした芸能人がよく言う“出会った瞬間にこの人と結婚するんだろうと思いました”という言葉を鵜呑みにするつもりもない。
偶然出会って、たまたまタイミングが合っただけだ。
運命なんかじゃないから、この恋が実るなんて期待はしない。
むしろ“初恋実らない”。
そんな負の迷信だけ信じるなんて、とんだネガティブクソ野郎だと思われるかもしれないが、そうじゃない。
冷静に現実を見ているだけだ。
俺とあいつの名前が似ていたから運命だと言えるなら、同性として出会ったことも運命だと言えるのか。
そんなの足枷にしかならない。
俺、郁山奏汰(イクヤマカナタ)は池山奏汰(イケヤマソウタ)に恋をしている。
出席番号が近かった。苗字が似ていて、名前が同じ漢字だった。
同じ高校で同じクラスになって、前後の席。偶然が重なって、仲良くなった。
元々ゲイだったのか、それともソウタだったからなのか、分からない。
けれど不思議と、自分の感情の正体を疑うことはなくて。
男だとか、女じゃなかったとか関係なく、こいつが好きなんだ、と自覚した。
それはもう四月半ばには気づいていた。
新入生のリクリエーションを兼ねた一泊二日の合宿で同じ部屋で眠り、皆で入った大浴場でソウタの裸にだけドキッとした。
それだけのことに、これが恋なのだと思えてしまったのだ。
同性相手の恋に自己嫌悪も絶望もしなかった。
叶うはずがないと何となく分かっていたし、それを伝えられないことの苦しさも、経験したことがなかったから、知らなかった。
恋がどんなものか知らず、気持ちの赴くままに、ただソウタを好きになった。初めて恋というものをした。
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