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まずは、晩御飯。
タッパーを取り出してお皿をお願いすると困った顔をされた。
うん、想定内。
「大丈夫、このままのタッパーでもいい?蓋をお皿にしたらいいから。」
「ごめん、作る習慣も載せる習慣もないから無くって。」
ちょっと安心しちゃうのは、女の人の影が見えないこと。
たぶん、女の人って、付き合ったらご飯作ったりするもんね?
って、やっぱり、俺、好きなのかな?
あ、ダメ、意識しちゃう。
「お、お箸は割り箸持ってきたから、チンだけしよ?」
「おー。」
あ、そうだ。
「大輔さん、スーツ脱いできたら?皺になっちゃう。」
そういうと頭を撫でられた。
「ありがと、じゃあ着替えてくる。」
奥の扉に消えた山下さんの姿を確認して、レンジを使わせてもらった。
次々と温めて、食卓に並べていく。
「お、美味そう。飲み物はお茶でいい?」
「うん!」
ラフな格好に着替えた山下さんがグラスを3つ取り出してお茶を注いだ。
・・・どうしよう。
俺に見えない誰かがいるの?
背中に汗が伝った。
ギクシャクと周りを確認する。
・・・どうしよう、俺には見えない!!
いきなり真っ青な顔になった光太郎を見て、驚いた。
「え?!具合悪い??」
肩を掴んで椅子に座らせる。
泣きそうな顔で、縋られた。
「だだ、だいすけさん!!」
「なに?」
「おお、おお、お、俺の見えない誰かが見えるの?!」
震える指先でグラスを指差され、納得した。
すでにオカルトモード入ったわけね?
可愛い怯えに苦笑する。
「これはね、お供え。」
収納の扉をひとつ開けて、お茶を供えた。
「あ・・・仏壇?」
トコトコと付いてきて、覗き込んだ光太郎に微笑んだ。
「そ。弟なんだ。」
そう言うと、途端に光太郎の目が潤んだ。
「俺もお参りしていい?」
「ありがとう。」
場所を譲ると、光太郎は頭を下げて静かに手を合わせた。
なぁ、結。
良い子だろ。
兄ちゃん、この子の事、好きになった。
どうしようか?
ぎゅるぎゅるぎゅるッ
「ハッ!!」
ブハッ!
盛大に光太郎の腹が鳴って、位牌の前で腹を押さえた姿に吹き出した。
「アハハッ!さ、食おう!」
もう、堪らない。
可愛くて可愛くて、抱きしめたい。
不思議な事に捕らえる気にはならなかった。
ぽかぽかと心が温まり、幸せな気分になる。
腕で囲って離したくない気もするが、それよりリリースして、ちょろちょろと動いている姿を愛でたい気もしている。
今までの子と違う。
不思議な感覚だ。
背中を押して食卓へ移動しながら、見おろした。
「作るの大変だったろ?」
そう言うと光太郎が小首を傾げながら にっこりと笑った。
「全然!大輔さんのびっくりした顔を想像しながら作ったら、あっという間!」
というか、嬉しそうな顔を想像した。
下ごしらえも、今日の本格的な調理も。
凄く楽しくて、わくわくした。
「美味しければ良いな。」
「すでに匂いだけで美味そうだぞ?」
ふたりで手を合わせて、蓋をお皿がわりにして。
まるでピクニック。
「うん、美味い!!」
「良かった!」
昨日からじっくり漬け込んだ唐揚げ。
今朝から捏ねて、生地を休ませたあと成形して焼いたハンバーグ。
コトコト煮込んだ筑前煮。
甘めの卵焼きと、彩りに絹さや。
サラダのタッパーにはミニトマトはコロコロ入れて、ブロッコリーはマヨネーズの海の側。レタスの仕切りを飛び越えたポテトサラダとゴボウサラダがキャベツに寄り添ってる。
「あぁ、この卵焼き、好きだ。」
「ほんと?俺、甘いのしかダメで。どうかな?って思いながら作ったの。」
もりもり食べてくれて、凄く嬉しい。
ラップに包んだ おにぎりの山も、どんどん無くなっている。
「すんごい、美味い!唐揚げは外がサクサクだな。」
「うん、頑張った。」
揚げてる最中、ずっと油をくるくる回し続けないとサクサクじゅわっとならない。
ありがと。
頭を撫でて貰えると、すっごく嬉しい。
大輔さんといると、ずっと笑ってる。
小夜さんのことが、忘れられた。
「光太郎くんは料理上手いな。また食いたいよ。」
「やった!俺、また作る!!」
「ありがと。材料費払うからね。」
材料費?
買ったのは、鶏肉モモと合挽き肉とゴボウの水煮くらい。
「たいしてかかってないよ?」
「だめ。お小遣いから出したんだろ?一人暮らし用の貯金しないといけないんだから、いくらかかったのか申告するように。」
ふふ、申告。
「はい、先生!」
「うむ。よろしい。」
しかし、美味いなぁ。
パクパク食べ進めてくれる大輔さんを見てるだけでニコニコしちゃう。
絶対、また作るんだ。
そう心に決めた光太郎だった。
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