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しばらく泣いて、よろよろと立ち上がった。
お掃除、サボっちゃった・・・。
もうみんな、帰ったよね。
ゼミのある人は、教室を移動してるはず。
だから、泣いてた顔は知られないはず。
俯いて、階段を降りていく。
無性に大輔さんに会いたかった。
誰もいない廊下を、ひっそりと歩きながら、ため息をついた。
会いに行きたい。
大輔さんに話を聞いて欲しかった。
「・・・うぅっ。」
気を緩めると、涙が落ちる。
どうしよう、仕事の邪魔はしたくないのに。
マフラーを巻いて、とぼとぼと歩きだした。
気がついたら、目の前にスナックがあった。
ここ、大輔さんのお家の一階・・・。
いつの間にか、大輔さんのお家に来ていた。
奥のエレベーターに乗り込み、5階を押す。
1つしかない扉の前に座り込んで顔を覆った。
大輔さん。
大輔さん。
おれ、どうしたらいいんだろう。
おれ、苦しい。
苦しいよ・・・。
※ ※ ※
おかしいな・・・。
いつもなら、メッセージが来ているはずの携帯に、何も通知が入ってなかった。
シャロンの状況を見て、平日も売り上げが落ち着いてきたのを確認し、店内の様子を見て回る。
乱雑にタオルが置かれてないか、着替えのカゴが汚れていないか、トイレの備品は揃っているか ザッとチェックして、もう一度携帯を見た。
変だ。
店長に気になった点を伝え終えると、店を出た。
変だ。
いつものメッセージが無いことに焦った。
光太郎の連絡先をタップすると、ほどなく光太郎が電話に出た。
『だいすけさん・・・会いたい!!会いたいよっ!』
泣いていたのか、泣きそうなのか。
その悲痛な叫びに胸がギリッと痛くなった。
「どこにいる!?」
『・・・大輔さんの、おうち。』
「すぐ行く!待ってろ!」
駅へと走った。
走ると同時にサロンに電話する。
「すまん、急用ができた!副店長にクローズをお願いしてくれ。」
クレジットカードで支払った人の売上処理、現金の確認と夜間金庫への預入、清掃の確認と施錠、警備のセット。
すべて副店長に放り投げて、家へと急ぐ。
最寄り駅を降りてタクシーへ乗り込んだところで、もう一件電話をかけた。
「財津様でらっしゃいますか?わたくし、光太郎さんと仲良くさせて頂いております、山下です。」
もう、今日は家に返すつもりがなかった。
「相談があるということで、わたしの家にいるようです。今日はもう遅いのでこのまま家に泊めても良いでしょうか。・・・いえ、大丈夫です。学校へは必ず送り届けますので、ご安心ください。・・・責任を持って、お預かりいたしますので。」
釣りは受け取らず、車を飛び出した。
乱暴にエレベーターのボタンを押す。
5階でゆっくりと開く扉にぶつかるように飛び出すと、玄関に座り込む光太郎を抱きしめた。
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