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不思議
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パチッ
目を覚ますといつものように見慣れた床が目に入った。
また今日が始まる。
起き上がろうとして何かに腕が引っ張られていることに気づく。
あぁ、そういえば手錠か。
どうしようか。いつもなら叔母さんが外しに来るのだが、
まあ、別に多少遅くなったところで遅刻には絶対にならないからいいのだが。
僕はいつもはやく学校に行くし、叔母さんは朝早くから仕事のはずだ。
そんなことを考えていると、
ガチャ
扉が開く音がした。
そちらを見ると、案の定叔母さんがいて、
「あら、起きてたの。それ外してあげるわ。」
そう言って鍵を開けて外してくれた。
「私はもう行くから。じゃあね。」
そう言うと叔母さんは足早に去っていってしまった。
僕はその場から起きあがり制服に着替え、下に降りて髪を整え顔を洗う。
普通なら顔を洗ってから着替えなのだろうが、前に着替える前に下に降りて顔を洗っていたらたまたま起きてきた叔父さんに休みの日だと勘違いされてそのまま犯されそうになった。
だから僕は先に着替える。
たまに制服を濡らしてしまったりするから面倒だが、学校に行けないよりはマシだ。
準備を終えて鞄を取ってから家を出る。
まだ6時だが、学校自体は早くから開いているからゆっくり歩いて学校へ向かう。
家にいるより、学校の方が安心出来る。
それに僕の通う中学は公立なのだが、頭がいいところらしく、朝の自習ということで朝早く来ている生徒もちらほらいるらしい。僕としては目立たないからありがたい。
ふぁ....
ふとあくびがもれる。
昨日遅かったからな....
授業中に寝ないようにしなければ。
あと、具合が悪くなっても悟られてはいけない。
そんなことを考えながら歩いていると学校に着いた。
下駄箱を見ると蒼くんの靴がある。
はや....
まあ、蒼くんならきっと邪魔はしてこないだろう。
そんなことを思いつつ教室に向かう。
教室に入ると、
「あ、おはよ。遥くん」
あ、紙出してない。どうしよ、
少し焦っていると、
「紙ないんでしょ?いいよ、」
僕がなんで焦っているのかを察してくれたのか、そう言ってくる。
軽く会釈をして自分の席に着く。
そして準備をして鞄をロッカーに入れてくると、
「ねぇ、遥くん、ちょっとお話、しない?」
彼がそう問うてきた。
その問いに頷く。
この二人きりの状況で拒んだりして気まずくなるのはいやだ。
勉強は授業もまだ始まっていないし、昨日のうちに沢山やったから大丈夫だ。
「遥くんってさ、俺と同じでしょ?」
彼が突然そう言ってきた。
でも、その一言だけで僕にはその問いの意味がわかってしまった。
動揺を隠し、どう誤魔化すかを考える。
ふと、彼の目を見ると、僕のことを真っ直ぐみていて。そんな彼を目の当たりにした僕は悟った。
これは、嘘は通じない。
直感的にそう思った僕は、頷く。
「やっぱりね。まあ、でも同じではないのかな。遥くんは色々されてるみたいだし。」
どういうことだろうか。
たしかに僕は性的虐待やら暴行やら色々されているが。
「どういうことがわかってない目だね。俺はなんにもされてないんだよ、言葉通りなんにも。」
その一言で理解した。
放置....されてる....の....?
「あ、わかったみたいだね。そうだよ。俺はね、いわゆるネグレクトってやつをされてるの。」
それは....辛いのだろうか。
僕は今の環境なら、放置された方が楽だ。だから彼の気持ちは分かってあげられない。
『そっか。辛いね。』
思ってもいない言葉を綴る。
どうせ彼も自分の置かれている環境を悲観して僕に共感を求めてくるのだろう?ならばくれてやる。本当は興味無いのだが。
「ふふ、思ってもいないくせに。遥くんって面白いね。」
その一言を聞いてびっくりした。
わかるのか。
『ばれた?』
「うん。こいつも共感して欲しいんでしょ?って顔してたよ。」
そこまでバレるとは。
『ごめんね。でも、僕にはよく分からないから。』
「だろうね。でも俺は共感して欲しいわけじゃないよ。なんて言うんだろう。特に意味は無いのだけれど、遥くんが気になるからさ。話題としてはこれくらいしかなかったから。もちろん普段は人には言わない。」
うん。そうかなって思ってた。
彼はおそらく同類。
僕と同じで抵抗をやめたのだろう。
否、抵抗する術などないのか。
ネグレクトは放置だもんな。している側に縋るしか、それを終わらせる術はない。
きっと彼はそれをしなかったのだろう。
「ふふふ、こんなにはやく俺の状況理解して色々考えてる人初めてかも。」
僕は考えを見透かされてるらしい。
まあ、その通りだから問題は無いのだが。
『そっちこそ。僕の家庭環境に気付いた人初めて。』
「そうなんだ。まあ、でも普通なら気づかないかも。遥くんは距離感掴むの上手だし。」
『そうかな?』
「そうだよ。遥くんは他人と距離をとるのが上手。きっといままで出会った人達は異変に気づく距離まで行けなかったんだろうね。僕の場合は近づかなくても雰囲気で何となくわかったけど。」
そうなのか。
雰囲気....そんなわかりやすいか?
『そんなにわかりやすい?これでも隠してるつもりなんだけど。』
「いや、多分普通の人ならわかんないよ。雰囲気だけじゃなくて遥くん自体もよく見てなきゃ気づかない。」
僕をよくみる....?
『どういうこと?』
「えっとね、例えば、その腕の痕。多分寝てる時とか手錠で繋がれてる。あとその首。うしろが締まるからって理由で首絞められてるでしょ。あとは....ちょっといい?」
そういって左手の手首を捕まれ袖を捲られた。
「ほら、やっぱり。リスカの痕。なんかいつも左手だけ変にかばってうごいてる。」
すご....よく気づくな。
『首の痕がついた理由、よく分かったね。気持ち悪いでしょ。』
その通り過ぎてむしろ笑えてくる。
セックスする時に叔父さんはちょくちょく首を絞めてくる
苦しいから少し嫌。
「いや、別に嫌悪はしないけど、めんどくさそうだね。」
っ....そんなこと言うのか。
不思議な人だな。
いままでに僕をまわした人達だってこの痕をみると気持ち悪がったり汚いと罵ったりしてきていたのに。
そのリアクションは予想外だ。
ことごとく僕の予想を裏切る行動をしてくれる。
面白い人だ。
『面白いね。蒼くん。』
「ふふ、そう?俺もね、君のことそう思うよ。」
初めて出会った時はあんなに距離を置かなければと思っていたのに、何故かその気にならない。
彼になら....
裏切られてもいいかもしれない。
否、彼はきっと僕を裏切ったりはしない。
そう信じたい。
久しぶりにそう感じた。
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