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彼という人
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「ふふ、遥くんと直に話してみたいなぁ、」
少し会話を続けていると蒼くんがそんなことを呟いた。
『なんで?意思疎通は筆談でも出来るよ?』
「んー、なんでだろ。よくわからないけどね。なんか、直に話したらもっと遥くんのことが知れそうかなって。」
少し微笑んで蒼くんがいう。
『なんだそれ、』
それをみて僕も少し表情が緩む。
すると少し驚いたように僕の頭に手をのせて悲しそうな顔をする。
「そっか....遥くんは大変だよね。」
突然の意味のわからない言葉に僕は戸惑いが隠せなかった。
でも、久しぶりに頭を撫でられて嬉しかった。こんなのいつぶりだろう。
「あ、ごめんね、急に。」
『大丈夫。ちょっとびっくりしたけど、』
「そっか。あ、人来た。俺はそろそろもどるよ。また話そうね。」
そういって蒼くんは離れていった。
蒼くん....やっぱり不思議な人だ。
そのあとは勉強を進めた。次第に人も増えてきて途中で中断して本を読み始めた。
すると、しばらくして先生が入ってきて連絡を始めた。
今日は6時間か....早く帰らなくて済む....
そんなことを考えていると連絡事項が終わり、10分休みの時間になった。
次の時間は国語か....
初めの授業だしきっとがっつり勉強はしないだろう。
そう思っていると国語科の先生が入ってきた。
小柄な女の人だ。しかも若い。
20代後半ってところだろうか。
「みなさんおはようございます。今日は初めての授業なのでこれからの授業内容を軽く説明するのと自己紹介の時間にさせて頂こうと思います。まずは自己紹介から。出席番号1番の人。お願いします。」
そういわれて男子1番の人が立ち上がって話し始める。
でも僕は興味がないので自分の番がいつ来るかのタイミングだけ見計らい、聞き流していた。
そして僕の前の人が自己紹介を終え僕の番になる。
『すみません。声が出ないので筆談で失礼します。櫻井遥です。趣味は特にありません。よろしくお願いします。』
「は....え....?声が出ないってどういうことですか?きちんと説明して頂かないとよく分からないのですが。学校側に伝えていますか?困りますよ。そういうの。」
学校自体に声が出ないことの説明はしてあるから先生側は把握しているはずなのだが....。
というか今日の朝担任に確認したら伝えてあるから大丈夫だと言っていたはずだが。
そんな僕が100%悪いみたいな言い方されても。
伝えてありますよ。きちんと。
『学校側に話は通してあります。担任の先生もほかの先生方には伝えておくから大丈夫だ。と仰っていたのですが。』
「そんな話聞いていません。今すぐ校長室にいってきちんと説明してらっしゃい。さあ。」
え....なにそれ。
伝えたって言ってんじゃん。
わかりましたと伝えようとして紙に書いていると、ふと聞きなれた声が聞こえた。
「先生、今日は自己紹介と授業説明だけなんですよね?なら声が出なくても支障はないですし、10分休みの時でいいのではないでしょうか。」
あ....蒼くん....
「そ、それもそうね....!ごめんなさいね櫻井さん。やっぱりいいわ。ここにいても。」
はぁ....なんなんだろう....
蒼くんには感謝しているが、先生の態度が気に入らない。
蒼くんに話しかけられた時のあの「女」の顔。
確実に蒼くんの顔を見て態度を変えた。
叔母さんと一緒。
気持ち悪い。
国語は好きな教科だが、初日から最悪の気分だ。
そしてそのまま自己紹介は続き、出席番号が最後の女子が自己紹介を終えると、
「よし、これでおしまいね。じゃあ最後に私の自己紹介をさせていただこうかしら。」
そんなことを言って名前や簡単なプロフィールなどを言い始めた。
しかし、さっきの発言でかなりこの先生のことを信用出来なくなっていたため、先生の話は全く頭に入らなかった。
そして、その後簡単な授業の流れを説明されて1時間目は終わった。
はぁ。無駄な時間だ。
こんなことをするより、授業を進めた方が余程有意義ではないのか。
そんな考えがずっと頭に浮かんでいる。
もう。色々と面倒だ。
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