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ごめんね
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いつもより、家に着くのが少し遅かった。
玄関のノブに手を掛けて、ふと、隣を見ると、
俺と同じように家に入ろうとしているハルと目が合った。
沈黙。
まだ諦めないで良いのかもしれない。
今なら言えるかもしれない。
言わなきゃ。言わなきゃ。
そんな思考をぶったぎったのは、ハルの声だった。
「トモちゃん、あのね」
なんだか嫌な予感がした。あの顔は、昔から決まって、何かを謝る時の顔だ。
「僕、クラスの女の子に告白されたんだ」
それは、もう遅かったと、俺には聞こえた。
「....背の低くって、ふわふわした髪でね。すごく可愛い子なんだ。まだOKはしてないんだけど....」
顔をハルに見せないように、俯かせる。
「...良かったじゃん」
無理矢理出した声は、どうしても震えてしまっていた。
「まだOKしてないなら、早くしてやれよ。」
逃げるように、家の中に飛び込んだ。
小さく、「ごめんね」と聞こえた気がした。
なんでお前が謝るんだよ。
全部自分の自業自得なのに。
そのまま玄関に踞って、みっともなく泣いた。
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