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見事に言い当てたフワフワはこちらを見つめ、ゆっくりと立ちあがった。
そして一歩、また一歩と足を運び
俺の座るソファーの真後ろで静かに止まる
ゴクリ――
無意識に喉がなる。同時に身体に力が入るのも感じた
後ろに確かに気配を感じるのに、振り返るのが怖かった
ふと掴まれた腕。
思わず引き寄せられた腕を目で追うと
俺の指先は既に、フワフワの形の良い唇の目の前にあった
カァッと顔が熱くなるのを感じた
比例するように心臓の動きはスピードを増す
あぁ、だから振り向きたくなかったのか。
こんな感覚は、要らない
こんな、心臓が窮屈になるような締め付けられる感覚
これが例えただの緊張感から来たものだとしても
思い出したくない過去がよぎるから
鼓動が早まる感覚なんかはどうにも苦手だった
…ダメだ。
このままではこいつの事を―――…。
「―ほら、ここ。親指の横側にタコがあります」
「っへ?」
「ココで楽器を支えるから、クラリネットやサックス奏者に多いんですよ。
音楽バカと生活していたら、嫌でもこういうことに詳しくなるんです」
「あ?……あぁ、確かに…?」
考え事をしてた俺はフワフワの話をほとんど聞いてなくて
適当に返事をしたけど反応を見る感じあながち間違った返し方ではなかったみたいでホッと胸をなでおろした。
「もーっ!!ちゃんと聞いてましたかー?」
間抜けた声にフワフワはおかしそうに肩を揺らしていた
- -*- - -*- - -*- - -*- - -*- - -*- - -*
「…じゃあ、俺はこれで。
ご迷惑をおかけしました。」
作られた笑顔で、決して振り返る事なく保健室を後にした。
戻れなくなる前に離れる。これが俺の出した答えだった。
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